文=松原孝臣 撮影=積紫乃
「自分の意思でやってほしい」
フィギュアスケートの衣装のデザイン、製作を手がける折原志津子は娘がスケートを始めたとき、その練習着や衣装を手がけたことからフィギュアスケートの衣装のデザインや製作を幅広く担うようになった。その中には国内外の大会で活躍するスケーターも多数含まれる。
それでも折原はこう語る。
「私は特に有名な選手だからとか関係なく、どの子も変わらない気持ちで作っています。ちっちゃい子のでも、ほんとうにその人その人に、同じ思いれで作っているんです。トップで活躍する選手だから頑張らなきゃというようなことはないですね。どの子にも、素敵に作ってあげたいと思っています」
根底には、「衣装を作ってあげて、それを着用して滑る選手の喜ぶ顔、うれしそうな姿が見たい」という一心がある。
娘である裕香に対しての話がそれと重なった。
裕香はシングルの選手として全日本ノービス選手権に出場するなどしたのちにアイスダンスに転向。カナダで活動したあと、2019-2020シーズンからユーホー・ピリネンをパートナーとし、フィンランドを拠点に活動している。昨シーズン、NHK杯にも出場、札幌・真駒内のリンクに元気な姿を見せた。
折原自身、フィギュアスケートは好きでテレビで放送があれば観ていたという。
「でも、昔からそんなに積極的にかかわったりはしないようにしていました」
そして言葉を続けた。
「というのは、自分の意思でやってほしいですから」
裕香が小さい頃、よく聞かれたという。
「優勝したらうれしい?」
それに対してこう答えたという。
「優勝したことがうれしいんじゃなく、優勝してうれしがっているのを見るのはうれしいよ」
折原は言う。
「何か、こっちが喜ぶからやる、親が喜ぶからやる、みたいなことはよくあるじゃないですか。それが嫌だったですね。本人がやりたくて、その中で本人がうれしいのがいちばんだと思うので、一歩引いてやるようにしてました」
ただ1つ、アドバイスしていたことがある。