文=松原孝臣 写真=積紫乃
ギタリストとして活躍
いまや、フィギュアスケートの衣装の世界で、たしかな存在感を示している。
原孟俊は数々のスケーターの衣装を、あるいはアイスショーの衣装を手掛ける。
昨シーズンはリズムダンス『コンガ』、フリーダンス『オペラ座の怪人』、エキシビション『Love Goes』と、村元哉中&高橋大輔のプログラムすべてのデザインを手掛けた。坂本花織のショートプログラム『Rock whith U/Feedback』、渡辺倫果のフリー『JIN-仁-』、三浦佳生のショートプログラム『ミケランジェロ70』、フリー『美女と野獣』なども原の作品だ。
アイスショーでは「ファンタジー・オン・アイス」で出演スケーター全員のオープニングやフィナーレの衣装などを担い、「「notte stellata」でもグループナンバーなどを担ったほか、羽生結弦と内村航平がコラボレーションした『Conquest of Paradise』を手掛けている。
当の原は、こう語る。
「衣装製作にはいろいろなアプローチがあると思うんですが、僕のようなタイプは日本では珍しいかもしれません」
その言葉の通り、フィギュアスケートのデザインを手掛ける原は、意外性のある経歴を持つ。日本では服飾関係の専門学校などで学び、その分野の会社に勤め、そこでデザインにあたる、あるいは独立してデザインや製作にあたる人がほとんどだ。
しかし原は、そうした分野を学校などで学んだことはない。
もともとはギタリストとして音楽の世界に生きてきて、現在も音楽に片方の足を置く。
「本格的に音楽をやりだしたのは16、17歳くらいですね。10代の頃は自分のバンドをやっていたりしたんですが、20代の前半くらいからどちらかというとセッションミュージシャンというかレコーディングをしたり、生徒さんに教えたり、いわゆるバックミュージシャンでツアーをまわったり、そういう感じで仕事をしていました」
原がフィギュアスケートに接点を持つようになったのは、フィギュアスケートの衣装のデザインや製作でも長く活躍してきた折原美奈子の存在が大きい。
「折原さんが『ファンタジー・オン・アイス』や高橋大輔さんの衣装を手掛けていたのは存じ上げていました」
彼女との交流からフィギュアスケートにも触れていった原は、時折、スケーターの選曲や編集の依頼などを受けることがあった。
そうしているうちに、衣装デザインについて、折原に本格的なアドバイスをするようになる。