文=松原孝臣 撮影=積紫乃
スケーターとしての自信を与えてくれた
高橋大輔との3シーズンの競技活動を終えて、村元哉中は言う。
「ほんとうにいろいろなことを気づかせてくれるというか、自分も素直にぶつかり合えるから自分でも気づくこともある、そんな感じですね。家族とはぶつかり合っても他人とそこまで深くぶつかり合うことはなかなかないので、自分の嫌なところもさらけ出してぶつかり合える初めての人だったので、自分の中でもひとつ殻がとれた気がします。
もう1つは自信を持たせてくれたこと。自分はスケーターとして今まで自信がなかったんですね。けれども、いろいろ引き出してくれて、自信を与えてくれて、引退してもやっていけるんだ、と思えるようにしてくれた人です。たぶん大ちゃんと出会ってなかったら今の道はなかった。出会えてよかったなとあらためて思っています」
フィギュアスケートのアイスダンスやペアにとどまらずバドミントンやカーリングのミックスダブルスなど、さまざまな競技で好成績を残す選手たちは、活躍の要因にしばしば「相性」を言う。村元の話は、高橋との相性のよさを思わせる。
では、相性とは何か。村元はこのように答えた。
「1年目はお互い新しいパートナーシップですし、だんだん知っていけばいろいろな面が出てきて、そこを乗り越えるか乗り越えないかで、関係性とか、合う合わないものが出てくると思います。もっとお互いのことを知ってから、そこからさらに深めていくかというのも重要だと思うんですけど、そこでコミュニケーションがとれない、はまらないと難しいと思います。それを相性と言うんでしょうか。相性って何だろうってなったらけっこう難しいですね。
もちろん滑る相手との相性もありますし、コーチ、トレーナーさん、いろいろな人との関係があるからだと思っているんですけど……相性って分からないです。私も知りたいです。ただ、人間性というか、ぶつかってでも一緒に最高のものを作りたい相手なのか、目標が一緒なのか。ちょっと妥協しないといけないこともあるし、でも妥協してもお互いの価値観や見ているところが一緒だったらどうにでもなるのかなっていう思いもあります」
高橋と村元は、お互いへの敬意を常々語ってきた。それが土台であったのは間違いない。