2025年12月20日、全日本フィギュアスケート選手権、男子シングル、フリーの演技を終えた友野一希 写真/長田洋平/アフロスポーツ
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(松原孝臣:ライター)

「本当に幸せな時間でした」

 ミラノ・コルティナオリンピックのフィギュアスケート日本代表の最終選考大会、全日本選手権が終わった。

 代表の枠は、シングルの場合、男女各3。わずかな枚数を巡り、大舞台を目指す選手たちは大会に臨んだ。

 その一人、友野一希はフリーの演技を終えて涙が止まらなかった。

 代表を狙う有力選手の一人と目されていた。オリンピックシーズンを何度も経験してきて、それらの中でもいちばん距離の近いところにいた。

 迎えた大会、ショートプログラムはスピンで思わぬ転倒があったものの4位につけ、フリーに臨んだ。だが出だしの4回転トウループで転倒。続く4回転トウループも着氷で乱れ、予定していた連続ジャンプにはできなかった。その後もジャンプで苦しんだ。結果、フリーは7位、総合では6位で大会を終えた。

 止まらない涙の中、でも友野は言った。

「本当に幸せな時間でした」

 そして続ける。

「ここまで200パーセント自分を信じられた試合はなくて、本当に試合の失敗だけだったというか、逆にすごいさっぱりはしたんですけど、こんなに自分を信じきれてやれたことはなかなかないので、それだけ努力した結果だと思います」

 そこにあったのは、4年間、真摯に歩んだという自負だ。そして手ごたえも感じてきた。

「これだけ毎年毎年、どんどん上手くなってるって感じていながらできるのも幸せだし、今年、特にそういう気持ちでできました」

 結果として、全日本選手権でそれは実を結ばなかった。それでも、「幸せ」と言える時を過ごしてきた。代表に手が届かなくても、それに打ち消されるような4年間ではなかった。