.ブリューノ・リリエフォッシュ《カケス》1886年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵 Photo: Cecilia Heisser / Nationalmuseum
(ライター、構成作家:川岸 徹)
スウェーデン国立美術館の全面協力のもと、19世紀末から20世紀にかけてスウェーデンで生み出された絵画を紹介する展覧会「東京都美術館開館100周年記念 スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」が東京都美術館で開幕した。
スウェーデン絵画は印象が薄い?
ヨーロッパ北部、スカンディナビア半島の東部を占める立憲君主国、スウェーデン王国。面積は日本の約1.2倍にあたる45万km2、人口はおよそ1055万人(2023年)。どちらも北欧4か国(スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマーク)の中で最大の数字を誇り、北欧の大国と形容されることも多い。労働組合と協同組合が発達し、社会保障制度が充実した福祉国家としても知られている。
北欧を代表する国ではあるが、芸術の分野ではやや印象が薄い。ノルウェーは巨匠ムンクが圧倒的な知名度を誇り、フィンランドは国民的画家ヘレン・シャルフベックが人気を拡大している。世界各地で回顧展が開催され、2022年には伝記映画『魂のまなざし』が公開された。デンマークは北欧デザインの発信地であるコペンハーゲンを有し、数多くの有名デザイナーを輩出。画家では近年再評価著しいヴィルヘルム・ハマスホイがいる。
スウェーデン人画家のABC
では、スウェーデンを代表する画家といえば誰か? スウェーデンには「スウェーデン人画家のABC」と呼ばれる3人の画家がいる。アンデシュ・ソーン(Anders Zorn、1860-1920)、ブリューノ・リリエフォッシュ(Bruno Liljefors、1860-1939)、カール・ラーション(Carl Larsson、1853-1919)の3人。「ABC」は彼らの頭文字をとって並べた呼び方で、スウェーデン美術の黄金期を代表する画家として知られている。
世代的にも近い3人は60~70年代にスウェーデン王立美術アカデミーで学び始めるが、アカデミックな歴史画制作に重点を置く美術アカデミーの旧態依然とした教育方針に不満を募らせていく。しかも教育課程は過度に長く、作品を発表できる機会は数少ない。3人が「国外に出て、新しい絵画を学ばなければならない」と考えたのも当然のことだろう。
カール・ラーションは芸術の中心地パリへ、アンデシュ・ソーンはスペインへ渡った後にイギリスへ、動物画家を目指していたブリューノ・リリエフォッシュは動物画を本格的に学べるドイツへと旅立った。こうした“海外流出”は彼ら3人に限ったことではなく、当時の多くの若い芸術家たちが国外への留学を果たしている。
