異国での学びを母国へ持ち帰る
カール・ラーション《カードゲームの支度》1901年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵 Photo: Anna Danielsson / Nationalmuseum
1880年代の終わりごろ、フランスで制作に励んでいた芸術家たちは故郷へと帰り始める。経済的な問題や郷愁の念の高まり、そして「異国での学びを母国に持ち帰り、新しい芸術を築きたい」との思いが帰国を決意させた。
彼らはフランスで多くの表現技法を学んだが、それをそのままスウェーデンで実践したわけではない。フランスでの学びはあくまでフランスの風土や文化、人物などを描くのに適した技法。彼らはスウェーデンを画題にするには別のアプローチが必要だと理解していた。
カール・ラーション《カードゲームの支度》は、ラーションが帰国後にダーラナ地方のスンドボーンに構えた家「リッラ・ヒットネース」のダイニングルームが舞台。この部屋にはこれから村の大人たちがカードゲーム「ヴィーラ」を楽しみに集まってくるのだという。妻カーリンは酒とグラスを準備し、娘のブリッタとチャシュティはすでにテーブルの端に座っている。
ラーションは室内の様子を丁寧に描き上げた。木のぬくもりが伝わる家具やテーブル、さまざまな様式の食器や調度品、オイルランプとろうそくのやわらかな灯り。窓の外は凍てつくように寒く、家の中はその寒さを忘れさせてくれるくらいに暖かい。まさにこれこそラーションがたどりついた「スウェーデン絵画」といえるのではないか。
大きな成功をつかんだ「ABC」
アンデシュ・ソーン《故郷の調べ》1920年 油彩、カンヴァス スウェーデン国立美術館蔵 Photo: Viktor Fordell / Nationalmuseum
ほかの画家たちもさまざまな手法でスウェーデンならではの表現に取り組んだ。スウェーデンらしい自然や風景を描いたり、北欧の神話や民間伝承に画題を求めたり。
冒頭で紹介した「スウェーデン人画家のABC」は、それぞれのジャンルで大きな名声を獲得している。カール・ラーション(C)についてはこれまで述べた通り。アンデシュ・ソーン(A)はイギリスやフランスで成功を収めた後、1896年に帰国。スウェーデンのなかでも歴史や伝統が深く根ざした地であるダーラナ地方モーラに居を構え、近隣に住む人々をモデルに絵を描いた。民俗舞踏や民俗音楽をテーマにした作品も多く残している。
ブリューノ・リリエフォッシュ(B)はヨーロッパを代表する動物画家になった。経済的に余裕がある生活を送り、ヨーロッパ各地にアトリエ付きのアパルトマンをいくつも所有。野生の動物を手つかずの自然環境のなかでとらえた作品は、スナップ写真のようなレアリスムに満ちている。
「東京都美術館開館100周年記念 スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」
会期:開催中~2026年4月12日(日)
会場:東京都美術館
開室時間:9:30~17:30(金曜日は〜20:00)※入室は閉室の30分前まで
休室日:月曜日、2月24日(火)(2月23日(月・祝)は開室)
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
https://www.swedishpainting2026.jp/
