渾身の演技をみせたシャイドロフ
マリニンが優勝を逃した大会を制したのはシャイドロフだった。そして2位に鍵山、3位に佐藤駿が入り、日本勢が複数のメダルを獲得した。
シャイドロフは今シーズン、調子は上がっていなかったが、4年に一度の大舞台で渾身の演技をみせた。コンビネーションジャンプの最後に4回転ジャンプを跳ぶという持ち味をいかしつつ、予定にはなかった4回転フリップに挑んで成功。臆することなく攻めの姿勢で臨んだことが功を奏した。
そしてシーズンの中でまぎれもなくベストの演技を見せての表彰台は、同じカザフスタンの選手でありソチオリンピック・フリーで会心の演技により銅メダルを獲得したデニス・テンを想起させた。
攻めの姿勢ということでは鍵山も共通する。今シーズン、初めて4回転フリップを試合に組み入れた。もちろんリスクはある。それでも、より高みを目指すためには必要だと考えた。
失敗には終わったが、「挑戦という形で戦い抜けました。未練はありません」。ジャンプで失敗はあっても、スピン、ステップなどしっかりやり抜いたことも、銀メダルへとつながった。これで鍵山はオリンピックで4つ目のメダル獲得、フィギュアスケートでは日本最多となった。
銅メダルの佐藤は冒頭の4回転ルッツを鮮やかに成功させ、高い加点を得た。そこから波に乗り、前半の4回転ジャンプはすべて加点が2点以上。
4回転ルッツはずっとこだわりを持ち跳び続けたジャンプ。絶対の武器へと昇華させたのはその時間あってこそ。
ジャンプの構成には悩んだという。それでも「笑顔で見に来てくださるファンの皆さんにいい演技を届けたいという思いでやろうと思っていたので」、これまで通りとした。好演技の土台にあったその一念もまた、メダルをもたらした。
三浦佳生はショートプログラムは22位にとどまったが、フリーで巻き返し、13位で終えた。
現地入りしてから靴が破損という大きなトラブルに見舞われ、厳しい状況に置かれた。ショートプログラムはその影響を如実に感じさせたが心折れなかったことはフリーで示した。
「4年後はしっかりメダルを獲れる選手になることが自分の役割です」
すでに先を見据える。
オリンピックという舞台で起きた思わぬ展開のもと、選手たちは全力を尽くし、それぞれに何かしらを得て試合を終えた。
三浦に限らず、それはこれから歩んでいくうえでの財産となるはずだ。
*JBpressでの連載「フィギュアスケートを支える人々」(2024年8月30日公開までの一部)と、書き下ろしを含む電子書籍『日本のフィギュアスケート史 オリンピックを中心に辿る100年』(松原孝臣著/日本ビジネスプレス刊)が発売中。
『日本のフィギュアスケート史 オリンピックを中心に辿る100年』著者:松原孝臣
出版社:日本ビジネスプレス(SYNCHRONOUS BOOKS)
定価:1650円(税込)
発売日:2026年1月20日
冬季オリンピックが開催されるたびに、日本でも花形競技の一つとして存在感を高めてきたフィギュアスケート。日本人が世界のトップで戦うのが当たり前になっている現在、そこに至るまでには、長い年月にわたる、多くの人々の努力があった——。
日本人がフィギュアスケート競技で初めて出場した1932年レークプラシッド大会から2022年北京大会までを振り返るとともに、選手たちを支えたプロフェッショナルへの取材を掲載。
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