みんな大好き?ミャクミャク(写真:ロイター/アフロ)
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(立川 談慶:落語家、著述家、筋トレ愛好家)

 大阪・関西万博が、いよいよ10月13日にフィナーレを迎えます。184日間にわたって開催され、運営費の黒字額は230億〜280億円になる見通しとのこと。閉幕が近づくにつれて連日20万人を超える人が訪れ、入場券の売上高が計画を200億円ほど上回るとか。公式キャラクター「ミャクミャク」などの関連グッズや飲食店の売り上げも好調。物価高であえぐ日本にも景気のいい話があるものです。

 ただ、警備費や途上国出展支援などの国費への付け替えがなければ収支は大赤字との指摘もあり、本当にどこまで儲かったのか、その検証はこれからなされることでしょう。

万博の運営費は黒字?国費に付け替え 実際は大赤字(赤旗)

 振り返れば、万博は準備段階から多くの議論を呼んできました。まずはミャクミャク。

 そのデザインが発表された当初、SNSやメディアでは「気持ち悪い」「不気味だ」「全然かわいくない」といった否定的な反応ばかりがあふれ返りました。また、万博自体のコンセプトや経済効果、建設費の高騰に対する批判も多く、「やる意味はあるのか」「税金の無駄遣い」といった声が支配的でもありました。

 当初、多くの人たちが否定的な気持ちになってしまったのは、前代未聞となった世界最大の木造建築物「大屋根リング」を目にして「なんだこれは?」と理解に苦しむ感情や、パビリオン建設の遅れ、出展を取りやめる国が出たといったニュースが報じられるたびに、大失敗の予感を抱いた人が少なくなかったからでしょう。

 そんな市井の反応は、先行きの不透明さや情報不足などが災いしたのかもしれません。私には、一向に生活が良くならない市民の不満の一つのはけ口になってしまったのではとも思います。

 私は表立っては否定しませんでしたが、全然かわいくない「ミャクミャク」の前途を無責任にも憂えていたものです。いや、正直ミャクミャクの不気味なイメージこそが、この一大イベントの前途を象徴するのではと同情さえしていました。

 ところが、です。

 万博が実際に開幕し、来場者の声やメディアの報道が増えるにつれて、SNSでは「ミャクミャクかわいい」「万博おもろ」といった肯定的な投稿が増え、閉幕が近づくにつれて「もう終わるなんて寂しい」「もっと行きたかった」と惜しむ声すら聞こえるようになっていったのです。

「ユスリカが大発生してヤバい」というネガティブな声も、気がつけば立ち消えていました。まさに批判も含めた話は「虫の息」になったような格好でありました。

 今回、この万博に対する人々の反応を落語的に読み解けないかと考えていたところ、こんな落語がありました。我が師匠・立川談志の『たがや』です。

『たがや』は多くの落語家が演じていますが、なぜあえて『談志のたがや』を取り上げるのかというと、他の落語家の『たがや』とは明らかに一線を画しているからです。

 まずは、一般的な『たがや』のあらすじを紹介します。