高関税政策を打ち出し世界を混乱させている米国のトランプ大統領(資料写真、2025年4月14日、写真:AP/アフロ)

(湯之上 隆:技術経営コンサルタント、微細加工研究所所長)

暴君トランプ大統領と各国の家来たち

 破壊的な「トランプ関税」が世界経済を揺るがし、自由貿易は終焉の時を迎えつつある。その影響で、各国の株式市場は連日乱高下を繰り返し、世界中がパニック状態に陥っている。

 この危機を回避しようと、各国の政府はトランプ大統領に慈悲を乞うべく躍起になっており、その姿はまるで、トランプ大統領が王として君臨し、各国が平伏す家臣のようである。

 とはいえ、どの国も心からトランプ大統領を敬っているわけではない。突如現れた暴君に対し、被害を最小限に抑えるため、やむを得ず表向きは従うふりをしながら、内心では反発する──そんな「面従腹背」の態度を取らざるを得ないのである。

TSMCにも我慢の限界がある

 半導体の受託生産(ファウンドリー)分野で世界シェア65%超を誇り、微細化技術でも最先端を独走する台湾のTSMCは、これまで米国の“忠実なしもべ”を演じてきた。

 2017年から2021年の第1次トランプ政権下では、米国政府から「2020年9月14日以降、中国のファーウェイ向けに先端半導体を供給しないこと」および「アリゾナ州に先端半導体工場を建設すること」を命じられ、従わざるを得なかった。