米軍の勲章「パープルハート勲章」受章者のための式典に出席したトランプ大統領(資料写真、2025年8月7日、写真:代表撮影/Abaca/アフロ)
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(湯之上 隆:技術経営コンサルタント、微細加工研究所所長)

 トランプ大統領は2025年8月6日、近く公表される見込みの半導体関税について、「米国に輸入されるすべての半導体におよそ100%の関税をかける」「米国内で製造していれば関税はかからないし、製造をまだ始めていなくても国内製造を計画していれば関税はかからない」と述べた(2025年8月7日付『日本経済新聞』)。

 この発言は一見、単純明快な方針のように見える。すなわち、米国内で製造中、あるいは製造を計画している半導体には関税を課さず、それ以外には100%の関税を課すという趣旨に読めるからである。

 しかし、実際の半導体製造工程を詳細に見ると、話はそれほど単純ではない。半導体は、設計を専門とするファブレス企業が設計し、TSMCなどのファウンドリーが12インチウエハ上にチップを形成する前工程を担う。その後、OSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)と呼ばれる後工程専業企業がパッケージングとテストを行い、初めて完成品のチップが出来上がる(図1)。

図1 半導体の製造工程
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 さらに、こうして完成した半導体チップは、ホンハイなどのEMS(Electronics Manufacturing Service)企業によって電子機器に組み込まれ、最終製品として出荷される。

 したがって、設計、前工程、後工程、組立の各段階がどの国で行われているのか、また、どの段階で米国に輸出されているのかを明確にしなければ、100%の関税が課されるか否かを判断することはできない。

 そこで、本稿では、AI半導体市場を事実上独占している米エヌビディア(NVIDIA)のGPUをケーススタディとし、トランプ関税が適用されるか否かを検討する。