2024年6月19日、北朝鮮の国賓レセプションに出席し、金正恩総書記(右)と会談したロシアのプーチン大統領2024年6月19日、北朝鮮の国賓レセプションに出席し、金正恩総書記(右)と会談したロシアのプーチン大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

朝鮮戦争では2年も続いた「占領地駆け込み拡張」の苛烈な攻防

 来年(2025年)1月20日(現地時間)にアメリカで始動する第2次トランプ政権。トランプ氏は大統領就任を待たず、前倒しでウクライナ侵略戦争の停戦に動き出すと意気込んでいる。

 対するロシアのプーチン大統領も、停戦交渉を見込み、少しでも有利になろうと策を練っているはずだが、中でも「占領地の駆け込み拡張」は最重要テーマだろう。

 停戦ライン(軍事境界線)は、その時点の戦線をベースに設定されるのが一般的だ。つまり停戦交渉妥結の直前まで、なりふり構わず攻勢を仕掛け、前線を1ミリでも相手側に押しやり、ウクライナの領土を1平方メートルでも多く占領した方が得だとプーチン氏は考えるだろう。

 朝鮮戦争(1950~53年)では、まさに休戦交渉(朝鮮戦争では「停戦」ではなく「休戦」にこだわった)を前にした占領地駆け込み拡張を巡る攻防が、韓国と北朝鮮との間で演じられた。

 朝鮮戦争は1951年春に戦線が膠着、同年夏に両陣営による休戦交渉が始まるが、両者は休戦協定締結後に設定される休戦ライン(DMZ/軍事境界線)を念頭に、今のうちに少しでも自国領土を広げておこうと激突した。

 その後1953年7月に休戦協定を締結するまでの約2年間、両国は朝鮮半島中央部で一進一退の激闘を展開するが、結局開戦直前に双方を隔てていた38度線の位置とあまり変わらない箇所で、前線が行き来するだけに過ぎなかった。

 戦闘で有利な高地を巡る攻防戦は凄惨を極め、特に白馬高地の戦いでは、14日間に12回も高地争奪戦が行われ、うち7回も攻守が入れ替わった。

 他にも「ブラッディ・リッジ(血の尾根)の戦い」「ハートブレイク・リッジ(心臓破りの尾根)の戦い」「板門店(パンムンジョン)の戦い」などが激戦地として有名だ。

朝鮮戦争。金浦飛行場附近で米軍が撃破した北朝鮮軍のT34戦車を視察するマッカーサー元帥朝鮮戦争。金浦飛行場附近で米軍が撃破した北朝鮮軍のT34戦車を視察するマッカーサー元帥(1950年撮影、写真:近現代PL/アフロ)

 戦争を仕掛けた現在のプーチン氏にとっては、ウクライナ軍の逆侵攻で奪われたクルスク周辺の失地回復が特に重要だ。ロシア本土が外国軍に占領される状況は屈辱的で、このままでは停戦交渉でもマイナスとなる。何が何でも早期奪還を図りたいところだろう。

 占領地駆け込み拡張の攻勢でがぜんものを言うのが、突撃する味方兵員を支援しつつ打撃力を発揮する鋼鉄の塊・戦車の存在だ。

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