ウクライナ軍がロシア西部に越境攻撃、ビデオ会議をするプーチン大統領ウクライナ軍がロシア西部に越境攻撃、ビデオ会議をするプーチン大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

ウクライナ逆侵攻の対応が遅いプーチン「4つの疑問」

 今年(2024年)8月6日、ウクライナが意表を突いて実施した、ロシア本土への地上越境攻撃、いわゆる「逆侵攻」に世界中が度肝を抜かれた。

2024年8月6日、ウクライナ軍はほぼ無防備のロシア国境を電撃越境2024年8月6日、ウクライナ軍はほぼ無防備のロシア国境をやすやすと電撃越境、軽武装のロシア国境警備部隊はパニックに陥り降伏(写真:ウクライナ国防省ウェブサイトより)

 ウクライナ侵略戦争を仕掛けたロシアのプーチン大統領は、「核兵器を持ち世界屈指の軍事力を有するわが国本土に攻め込むはずがない」と、ウクライナのゼレンスキー大統領を見くびっていただけに、そのメンツは大いにつぶされた格好だ。

 ただ不可解なのは、ウクライナ逆侵攻部隊が国境から約30kmも内陸のクルスク州スジャ周辺まで進撃し、1カ月以上居座っているにもかかわらず、ロシア側の対応があまりにも鈍い点だ。

 激震に見舞われたプーチン政権は、しばらくの間思考停止・現実逃避に陥ってしまったのだろうか。国家安全保障の“一丁目一番地”である本土防衛があっけなく破られ、「母なる大地」ロシアの一部を外国軍に占領される状況は、誰の目から見ても緊急事態だろう。

 対応にぐずぐずしているようでは、「強い指導者」を自負するプーチン氏の看板も地に落ちる。早々に大戦車軍団を差し向け、「わが祖国を踏みにじったウクライナ軍を鎧袖一触(がいしゅういっしょく:よろいのそででちょっと触れたぐらいの簡単さで敵を負かすこと)で粉砕した」と内外にアピールするのが、「プーチン流」だろう。

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 反応の遅さに対し、マスコミ各社や専門家はさまざまな疑問を投げかけるが、中でも4つの素朴な「なぜ」について分析していきたい。

・なぜ、やすやすとウクライナ軍に逆侵攻を許したのか?
・なぜ、軍事大国ロシアが即応できずもたもたしているのか?
・なぜ、国家総動員を発令して一気にウクライナ軍をつぶさないのか?
・なぜ、集団的自衛権を行使しないのか?