8月27日、キーウで記者会見するゼレンスキー大統領(写真:ロイター/アフロ)
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(舛添 要一:国際政治学者)

 8月6日、ウクライナは、スムイ州からロシアのクルスク州への越境攻撃を行った。その結果、ウクライナ軍総司令官によれば、既に1294km2(東京23区の約2倍に相当)、100集落を占領し、594人を捕虜にしたという。この地域から20万人の住民が避難している。

 この越境攻撃の目的は何か、そしてその目的は達成されているのか。ウクライナ軍占領地域の40km先にはクルスク原子力発電所があり、8月27日にはIAEAのグロッシ事務局長が視察したが、原発事故も懸念されている。

軍事的目的

 軍事的な目的は、ロシア軍の勢力を分散させることである。ウクライナ領で戦っているロシア軍の一部は、占領されたクルスク州奪還のために転戦することになる。それは、ドンバスにおけるロシア軍の攻勢を弱めることにつながる。

 しかし、その狙いは外れている。ロシア軍はクルスク州奪還のためには、本土から僅かな部隊を割いたのみで、逆にドネツク州で攻勢を強め、交通の要衝であるポクロウシクを奪取する作戦を開始した。

8月26日早朝、ウクライナ南部のオデーサに対するロシアのミサイル攻撃により、子ども3人を含む7人が負傷した(写真:Cover Images/Cover Images via ZUMA Press/共同通信イメージズ)
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 ウクライナ軍は、越境攻撃に1万人を超える精鋭部隊を投入しており、その分、本土防衛が手薄になっている。

 越境攻撃に対する報復として、ロシア軍は、首都キーウなどの諸都市、発電所などのエネルギー施設をドローンやミサイルで攻撃している。