はじめに
2022年2月24日にロシアの侵攻により勃発したウクライナ戦争は既に3年目に突入、8月11日には900日を超えた。ウクライナの奮戦も見られる中、戦線の膠着が報道されている。
この間、北大西洋条約機構(NATO)にスウェーデンおよびフィンランドが加盟し、NATOの加盟国は32か国となった。
今後、NATOはロシアの脅威をどのように見積もり、集団防衛のための態勢を整備していくのであろうか。
NATO加盟国の中でも、主要な兵力供給国であり、EUを牽引する経済大国のドイツは、「時代の転換点(Zeitenwende)」として国防費を大幅に増加させ、ウクライナへの軍事支援を拡大してきた。
そのドイツの連邦軍のトップであるカーステン・ブロイヤー(Carsten Breuer)連邦軍総監は、2029年にロシアがNATO加盟国に対し攻撃を開始する可能性を見積もり、それまでに真に戦争を遂行できる連邦軍に変容させると明言している。
歴史を紐解けば、第2次世界大戦終結後、東西に分断されたドイツはNATOとワルシャワ条約機構(WTO)が対峙する最前線であった。
NATOに組み込まれ、創設された連邦軍は文字通り戦争に備え、戦える軍隊であった。
本稿は、ドイツを含めNATOの軍事態勢において課題となっている事項は何か、とりわけドイツはどのような態勢を整備しようとしているのかについて考察するものである。