連邦軍は国内の現場において、例えば、コロナ・パンデミックの際の予防接種、水害時の土嚢運搬などの災害対応において、最大限に対応し市民社会への各種支援を行ってきた。
NATO東翼の軍事的な衝突がエスカレートした場合、連邦軍の限定された能力を踏まえれば、国内の諸官庁あるいは自治体は、NATOおよびドイツ連邦軍から各種支援の要請がなされる可能性が高い。
具体的にはNATO部隊に対する食料、宿泊所、駐車場、飲料水、塵埃処理などの支援である。
とりわけ、連邦技術支援庁(Bundesanstalt Technisches Hilfswer:THW)および地域コミュニティの支援が重要な鍵となる。
THWは1950年に市民防衛を目的設立された内務・国土省の管轄する組織である。THWは地震、水害などの自然災害から交通事故や労働災害に関して関係機関に対する技術的および物流的な支援を実施している。
2002年8月に発生したドイツ東部エルベ川洪水では全体で約2万4000人のTHWの職員が災害救援活動に参加した。
ドイツ国外でも、2000年にフランスの暴風による停電災害に際し、病院などの電気システムの復旧を実施した。
さらに、2011年3月の東日本大震災にも来日して人命救助活動で活躍した経緯がある。
現在、どの交通路が輸送に使用され、どの橋梁が問題となるか、どの休憩所があらかじめ計画されるか、どのレベルの防護が必要かについて、連邦軍、警察、消防、THW、自治体、地域コミュニティなどの間で綿密な調整が実施されている。
A2の場合、300~500キロごと、ルートに沿って輸送団が駐車可能なスペースと施設が不可欠となる。
このため、主要道路の破損・損壊に備え、迂回路を数本準備するとともに、ルート沿いの湖沼や河川の安全が確保されない場合の応急橋梁の進入点まで検討されている。
このような検討を踏まえつつ、2024年春、ヘッセン州のアルスフェルド(Alsfeld)に試行として、輸送団支援センターが建設された。
A2ではなく、A5に直近であり、部隊移動のための軍の休憩所が創設された。ここでは米軍の2個輸送団200人が乗り入れて、その施設の有効性を検証している。
将来、まずA2に、NATOの戦力推進のための各種基盤が整備されていく可能性が高い。
また、今後A2以外の戦略機動、後方連絡線、補給幹線となりうる経路にも各種施設が整備され、地域の関係機関との連携によりその実効性が高められることになろう。
戦争は将兵、装備のみでは戦うことはできない。戦力を推進し、強靭に戦力を維持しうる基盤としての兵站を含むレジリアンスの強化が喫緊の課題となっている。