新兵宣誓式(ドイツ連邦軍のサイトより)

 ドイツは1957年以来継続してきた徴兵制を2010年に停止した。

 ロシアのウクライナ侵攻に直面したドイツは、連邦軍を戦時、真に役に立つ軍隊とするため、国防予算をGDP(国内総生産)比2%に引き上げ、弾薬を確保しつつ、装備の近代化に努めている。

 しかしながら、ドイツ連邦軍は志願者不足に悩まされている。

 約18万1000人の将兵から構成される連邦軍は、編成定数である20万3000人に遠く及ばない。

 他方、連邦軍における良心的軍務拒否者の数はウクライナ侵攻以降、急増している。

 2021年には201人であったが、2022年には951人の申請があった。

 2023年1月末、ボリス・ピストリウス(Boris Pistorius)国防相(SPD: 社会民主党)は「一市民として、一国民として、一政治家として、2011年に徴兵制を停止したのは間違いだった」と述べた。

 ピストリウス氏は徴兵を経験し、弁護士、政治家となり、将兵からも人気が高い国防相である。

 この発言を受けて、ドイツ国内で徴兵制の再導入を巡り、侃々諤々の議論が行われている。

 本稿は、ドイツの徴兵制の再導入を巡る議論を紹介し、その課題について分析するものである。