吉原風景『看板』(写真:著者提供)吉原風景『看板』(写真:著者提供)

 2023年11月、『紅子の色街探訪記』という写真集が発売された。元ソープ嬢の紅子が、日本各地の遊郭や赤線地帯を訪れ、その土地や建物、遊郭の廃虚内部やそのエリアがまとう独特の空気を写真に収めた作品だ。

 写真集は人気を博し、4月には『紅子の色街探訪記2』が発売される。過去をひた隠しにしてきた女性は、なぜすべてを語り、第二の人生を切り拓こうとしたのか。紅子氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──そもそもどのような経緯で、こういった色街の写真を撮るようになったのですか?

紅子氏(以下、紅子):私はもともと、吉原や関東各地の風俗街で働いていました。私は52歳ですが、そうした仕事をしていたのは、19歳から32歳までです。

 幼い頃から人の言葉が理解できず、学校にもほとんど行くこともできませんでした。そのような中、社会で働くということが全くイメージできず、やがてそうした仕事に入っていきました。

 ソープ嬢をしていた頃は、「自分は恥ずかしい場所で働いている」「どうやってここを抜け出したらいいか分からない」という気持ちを抱えていました。そんなソープの仕事をやめたのは32歳の時。心身ともに体力の限界を感じたのと、ちょうど結婚したこともあって仕事をやめました。

 もっとも、子どもが1歳の時にシングルマザーになってしまうんですけどね。

 風俗で働いた経験しかなかったので、どうやって生きていこうか悩みましたが、もう一度、風俗の仕事に戻りたいとは思いませんでした。その後、事務のパートの仕事を見つけ、子どもが寝ている夜中や早朝に漢字やパソコンの勉強をして、どうにかやっていけるようになりました。

 そのようにして十数年間、週6日勤務で事務の仕事を続けました。ただ、ささやかな日々の喜びはあるものの、40代後半になったあたりで「過去を後悔したまま人生が終わっていくのだろうか」と疑問を持つようになったんです。

 そして、子どもが中学生になり、自分の時間が持てるようになってくると、「自分にできることを何か表現として残したい」と思うようになりました。

 そこで、歩きながら見つける景色を撮って、1日1枚の写真をインスタに上げることにしました。私は街歩きが好きなんです。

 ただ、実際に撮った写真をインスタに上げるときに撮影した場所について調べると、私が撮る場所の多くが、赤線や遊郭などの色街エリアであることが分かってきたのです。