この演習は、2024年1月末から5月末まで、2段構えで実施された。
前段の第1部演習は、1月末から3月中旬までの間、大西洋と北極圏の海上機動に重点を置かれた。
具体的には、北米からポーランドやバルト3国などへの将兵の海上機動に焦点を当てた実動演習(LIVEX)が実施された。
後段の第2部演習は、2月中旬から5月末まで、オランダのブルンスムに所在するNATOの統合軍司令部が主導した。
具体的には、北極圏から東部ヨーロッパ地域に配備される増援部隊の戦略機動、とりわけ、英国からポーランドに派遣される緊急即応統合任務部隊(Very High Readiness Joint Task Force: VJTF)の戦略機動が重要な演練項目となった。
このNATOの演習は、さらに欧州大陸全域で加盟各国が独自に行った演習と連動して実施された。
第1部および第2部を通じて、NATOと各加盟国による演習は、陸、海、空、宇宙、サイバー、電磁スぺクトラムなどの複数の領域で実施されるマルチ・ドメイン・オペレーション(MDO)の演習となった。
このように、「不動の防人2024」演習は、陸、空、海、宇宙、サイバー、電磁スペクトラムなどの領域まで拡大したMDO演習であり、数カ月にわたって、何千キロも離れた高地から中欧・東欧まで、いかなる状況下でも、複雑な複数領域の作戦を実施し、維持できることを示すものであった。
他方、NATOおよびその加盟国は、欧州の防衛を強化するために、北米や同盟国の他の地域から部隊を迅速に展開する際の様々な課題と教訓事項を把握するに至った。
この過程において、いわゆる文官組織と軍事組織の協力という軍民協力と加盟国のレジリエンス上の課題が再び明らかとなったのである。