A2は平時には、ヨーロッパの大動脈となる幹線であるが、有事となれば、NATO東翼の前線への補給幹線であり、後方連絡線となりうる。

 このため、ドイツの各省庁、州から市町村までの自治体、そして連邦軍が連携して、有事のレジリエンス上の課題を克服するための施策を講じつつある。

 冷戦期には、NATO対WTOの構図は、西ドイツと東ドイツの直接対峙であり、西ドイツは最前線に位置づけられていた。

 現在のドイツはNATOの最前線ではない。しかしながら、ドイツは有事に何十万のNATOの部隊が最速で東方に展開する戦略的に重要な地域となる。

 その中心的な経路こそ、オーバーハウゼン(Oberhausen)からベルリン外環道路までのA2である。

 NATO東翼での有事の際、3か月から6か月以内に80万人の将兵をオランダ、ベルギーおよびドイツの北海の港湾から、東方に送ることが必要である。

 同時に推計約20万両の車両、重装備、戦車、輸送車などを総距離1万3000キロの地域まで戦略機動させる必要がある。

 加えて、A2沿いを戦略機動するNATOの部隊は、この経路上で補給を受をけ、将兵は宿泊しなければならない。そのためのエネルギーやインフラも必要となる。

 具体的には電力、天幕、野戦ベッド、炊事場、燃料保管庫及びそれらに従事する専門員が不可欠となる。

 また、部隊機動間に計画的な妨害工作あるいは敵の工作員による攻撃はNATOの戦略機動を遅滞もしくは阻止するため、対抗策を準備しておかなければならない。

 この検討状況を受け、A2沿線のドイツ市民から、ドイツを防衛する部隊の能力および、最短で通過可能な部隊規模に関する問い合わせ、ならびに東方に移動中の部隊が攻撃対象となるといった懸念が、関係部署に多く寄せられている。

 ドイツの与党である社会民主党(SPD)のナンシー・フェーザー(Nancy Faeser)内務・国土大臣は「ロシアの攻撃により、安全保障環境は完全に変化した。軍事力による抑止と対処に加え、国民保護を強化しなければならない」と述べている。