政治的目的

 政治的にはプーチン大統領の威信を失墜させることに成功した。プーチンは、ウクライナ軍がロシア本土に侵攻してくることなど全く予想しておらず、外国軍によって領土を奪われるという第二次世界大戦後初めての失策を許してしまった。

 これまでは、反プーチン派のロシア人がテロ活動を行ったり、ウクライナが無人機などで散発的にロシア領内の標的を攻撃したりする程度であった。ところが、今回は一個師団規模の地上軍が侵攻し、ロシア領を占領したのである。

 昨年は、アメリカ議会での予算案通過に手間取り、アメリカからの武器支援が滞ったこともあって、ウクライナは反転攻勢に失敗した。そのため弱体化したウクライナ軍というイメージが世界に拡散された。そこで、そのイメージを覆し、ウクライナ軍がロシア領内に侵攻できる意思と能力を有していることを示す狙いもあったと考えられる。

 情報収集についても、NATOの協力を得て、ロシアよりも優れた能力を発揮した。奇襲の成功は、それを物語っている。

 今回の成功は、ウクライナ軍の士気を高めることにもつながる。