ロシア軍の火砲がウクライナ軍のHIMARS(高機動ロケット砲システム)や155ミリ榴弾砲の餌食になりやすくなっている(写真は米海兵隊の155ミリ榴弾砲、米海兵隊のサイトより)

 最近のウクライナ地上軍とロシア地上軍の地上戦を見ていると、注目が集まっているのは、ロシア軍の進出、防御するウクライナ軍の撃退、その結果による、両軍の損失数についてだ。

 今、ロシア軍はどのような戦い方をしているのか、それは合理的な戦いなのか、兵士の命を犠牲にして何が得られているのかなどの分析は少ない。

 そこでここでは、ロシア軍損失の推移と作戦とを重ね合わせて考察する。

1.ロシア軍のこの10か月の戦い

 ロシアは昨年(2023年)10月頃からアウディウカ方面などで攻勢を強め、今年(2024年)8月までに、4か所の地域で戦いを優勢に進め、戦線を前方に押し出している。

 米国戦争研究所「Critical Threats」によれば、その戦果が出ているのは、下図の赤丸の地域であり、どれほど進展したかは、図に示している範囲である。

図 ロシア地上軍の進出線の変化(2023年10月5日と2024年8月5日頃)

出典:米国戦争研究所「Critical Threats」両軍占拠地域の経年変化

 ロシアは、約10か月の期間にこれだけの戦果を出すために、「歩兵の肉弾戦」と呼ばれるほどの犠牲を厭わない攻撃を行い、多くの損失を出している。

 今回は、両軍の地上での戦いとロシアの兵員、火砲の損失推移の関係、特に無謀な攻撃がどれほどの多くの損失を出しているのかを見る。

 また、火砲の損失が今後、歩兵の損失にどれほどの影響が出るのか、そして最後にロシアの今後の戦力の許容範囲(限界)を予測したい。