因みに、越境攻撃によって捕虜となったロシア兵115人と、同数のウクライナ兵の捕虜が交換で解放されたことは一つの成果である。

長射程兵器の使用制限を緩和してもらう狙い?

 越境攻撃のもう一つの狙いは、西側から供与された長射程兵器のロシア領内での使用許可を得ることである。戦争のエスカレーションを危惧するNATOは、その使用を固く禁じている。そこで、射程の短い兵器だとロシア領内に侵攻してから使わないと効果が無いということを強調するために、ウクライナ軍が侵攻したというわけである。

 イギリスが供与した射程250kmの長距離巡航ミサイル、ストームシャドーの使用を求めているが、NATOは認めていない。ただ、今回の越境攻撃ではイギリスの主力戦車チャレンジャー2が使用され、セイム川の3つの橋はアメリカ製の高機動ロケット砲システムHIMARSで破壊されたという。

セイム川に架かる橋をウクライナ特殊作戦軍が破壊。破壊には米国から供与された高機動ロケット砲システム「HIMARS」が使われた(写真:Cover Images/Cover Images via ZUMA Press/共同通信イメージズ)

 しかし、西側から供与された武器をロシア領内で制限なしに使うというウクライナの希望はまだ叶えられそうもない。

 ウクライナでは、NATOから供与されたF16戦闘機を使っての防衛体制の強化が進んでおり、ロシアのミサイルやドローンを撃墜しているという。