停戦交渉に入る可能性は低い
さらには、来たるべき停戦交渉を有利にするためである。8月27日に記者会見したゼレンスキー大統領は、今回の越境攻撃は、「ロシアに対する勝利への計画」の一環であり、「ロシアに戦争終結を強制する」という。
ゼレンスキーは9月に訪米して、バイデン大統領とこの計画について議論するという。また、次期大統領候補であるトランプ前大統領とハリス副大統領にも計画の内容を伝えるという。
しかし、今回の越境攻撃は、事前にアメリカと打ち合わせて実施したものではなかろう。アメリカは戦争の拡大を望んでいない。ロシアは、祖国防衛のためには核兵器の使用も辞さない方針であり、ロシアとNATOが直接対峙すれば、第三次世界大戦へと拡大する危険性があるからである。しかも、ガザなど中東紛争にも対応せねばならず、本音では、ウクライナが余計なことをしてくれたという認識だろう。
ゼレンスキーは、領土については譲歩をしないし、プーチンとの対話は拒否すると明言しており、それで停戦交渉が上手くいくとは思えない。幻想で外交を行うのは危険である。
ロシア大統領府のペスコフ報道官は、28日、この停戦交渉案を一蹴し、特別軍事作戦を継続すると反論した。
ゼレンスキーの賭けが成功する可能性はほとんどない。