2023年8月、韓国・坡州で行われた米韓軍事演習2023年8月、韓国・坡州で行われた米韓軍事演習(写真:共同通信社)

韓国の政治的空白で出ばなをくじかれるトランプ氏

 2025年1月20日(現地時間)、第2次トランプ政権がアメリカで本格始動するが、第1次政権時(2017~2021年)に物議を醸した「在韓米軍撤退」が早くも蒸し返されそうな雲行きだ。

 交渉相手の韓国は今、1987年の民主化以来、最大規模となる政治的混乱の真っただ中にある。今年(2024年)12月3日に、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が突如戒厳令を発令。数時間後にあっけなく解除されたが、最大野党の「共に民主党」などは内乱罪だとして尹氏を指弾。憲法裁判所は尹氏の弾劾裁判を開始し、判決次第で尹氏は失職しかねない。

「非常戒厳」の宣布を巡り内乱などの容疑で出頭要請が出ている韓国の尹錫悦大統領「非常戒厳」の宣布を巡り内乱などの容疑で出頭要請が出ている韓国の尹錫悦大統領(写真:Yonhap News Agency/共同通信イメージズ)

 尹氏の早期退陣を叫び、俄然鼻息が荒いのが、共に民主党代表の李在明(イ・ジェミョン)氏で、大統領選への出馬に意欲も見せる。「親日・反北」の尹氏とは対照的に、李氏は「反日・親北」で国民からの支持も高く、現時点で総選挙に出れば、次期韓国大統領間違いなしだ。

 とはいえ、そんな李氏も訴訟を多数抱えているため予断を許さない。特に今年11月に判決を受けた、選挙法違反による執行猶予付き懲役刑は深刻だ。韓国では3カ月以内に控訴審の結論を出さなければならず、ここで罪が確定すれば、今後10年間は大統領選を筆頭に、公職選挙への出馬はできなくなる。

次期大統領候補と目される韓国最大野党「共に民主党」の李在明代表次期大統領候補と目される韓国最大野党「共に民主党」の李在明代表だが…(写真:共同通信社)

 2025年2月の控訴審判決の期限まで、なりふり構わず大統領選を先延ばししようとする尹氏と、尹氏の失職と総選挙の早期実現を目指す李氏との「仁義なき戦い」が展開されている。

 このように足元がおぼつかない中、韓国側としてはトランプ氏の政権移行チームと「在韓米軍撤退」に関して内々に話し合う余裕もなく、それ以前に、韓国側の政権がガラリと変わるかもしれないため、窓口さえはっきりしないというのが実態だ。