李在明氏が次期大統領就任なら在韓米軍撤退も大歓迎?

 仮に「反日・親北」の李氏が韓国の次期大統領に就任すれば、トランプ氏との間で繰り広げられる在韓米軍の駐留負担金交渉は相当もつれ込むことが予想される。

 なぜなら「親北」を自負する革新・左派系の李氏にとって、国内に根強い駐留米軍への反発感情や、北朝鮮との融和を考えれば、在韓米軍は早期撤退が望ましい。撤退を畳みかけるトランプ氏に対し、お笑い芸人のネタではないが「どうぞ、どうぞ」と李氏が返したらどうなるだろうか。

 もっとも「在韓米軍撤退」を叫ぶトランプ氏も、多少の兵力縮小は想定するものの、完全撤退までは考えておらず、駐留コストの軽減が本心だと見られる。

 なぜなら、中国を「最大の競争相手」と見なし、アジア太平洋地域における軍事的優位性を確立し、中国軍の膨張を封じることが、自らが唱えるMAGA(Make America Great Again/アメリカを再び偉大な国に)の“一丁目一番地”だと考えているからだ。

 アメリカの同盟国である韓国や日本、フィリピンは、中国軍封じ込めのキーストーンで、中でも在韓米軍は、ユーラシア大陸の極東アジア地域の一角、朝鮮半島の橋頭保に布陣する尖兵としても重要だろう。

 北朝鮮に対する抑止力はもちろん、中国に対して軍事的なにらみを利かす意味でも韓国は不可欠な存在だろう。中国にとっても北朝鮮という緩衝国があるものの、陸続きで“宿敵”の米陸軍が師団規模で駐屯する存在感は、かなりのプレッシャーに違いない。

 こうした軍事戦略上の大切さもさることながら、例えば在韓米軍全部の撤退ではなく、主力の第2師団約2万人の本土撤収となった場合、今後同師団にかかるランニングコストは全部アメリカが負担しなければならず、この工面に頭を悩ますことになる。

 前述のように、在韓米軍の韓国側負担額、年間約1672億円を考えると、第2師団を本土に帰還させた場合、年間の維持費は少なくとも2000億円はかかるだろう。

 もちろん全額米国民の納税で賄わなければならず、基地・駐屯地のそばにつきものの米軍専用ゴルフ場のキャディの給与や芝の手入れ代、莫大な水道光熱費、宿舎のトイレットペーパーや新しい運動器具に至るまで、これまではこの大半を韓国政府持ちだったが、本土撤収となれば、すべてアメリカの自腹となるのだ。

 多くの同盟国が負担する駐留米軍の“思いやり予算”は、そろばんを弾くとアメリカにとって非常に魅力的なシステムだ。特に負担額が大きい在日米軍の場合は、「米兵はパンツ1枚と銃1丁、弾薬1箱だけ携えて来日すれば、後は全部日本政府にお任せ」と揶揄されるほどの厚遇ぶりである。

 トランプ氏は目先の数字ばかりを追いかけるのは得意なようだが、中長期的に考えると実においしい仕掛けを理解していないようにも思える。しかも、李氏が次期韓国大統領になれば、「在韓米軍は全面撤退しても構わない」とたんかを切りかねず、その結果とんだやぶ蛇となる可能性もある。

 それでもトランプ氏は奥の手を繰り出し、貿易赤字の報復として韓国を高関税の血祭りに上げ、「アメリカが要求する駐留米軍の経費負担増に応じなければ、さらに高関税をかけるぞ」と脅す可能性があり、最終的には韓国政府も在韓米軍の駐留経費の大幅アップに応じざるを得ないだろう。