トランプ・金正恩の直接会談で在韓米軍「第2師団撤退」シナリオも
大手メディアによれば、トランプ氏の政権移行チームは早速、北朝鮮の金正恩総書記との直接会談を検討しているようだが、トランプ氏は韓国大統領との交渉を差し置いて、正恩氏との間で在韓米軍撤退の約束を交わす可能性すら否定できない。
北朝鮮の核兵器・ミサイル開発、特に北米大陸に到達可能なICBM(大陸間弾道弾)に関して、何らかの約束を取り付け、その交換条件として在韓米軍、特に第2歩兵師団の全面撤退を差し出す、というディールを持ち出すことも考えられるだろう。
この場合、あくまでも韓国側が負担額の大幅アップを認めない場合の“嫌がらせ”の意味も込められているが、仮に李氏が韓国の次期大統領に就任した場合、同氏が率いる共に民主党など左派勢力は、第2師団の撤退自体は大いに歓迎するはずだ。
一方、韓国国内の保守勢力、特に尹氏率いる「国民の力」支持層や、北朝鮮への性急な接近をよしとしない中道派の国民は一斉に李氏に反発するはずだ。
しかもトランプ、正恩両氏が韓国大統領を無視し、頭ごなしに韓国の安全保障に関わる事案を決めたとなれば、李氏の指導力や政治手腕は地に落ち、今後の政治運営もおぼつかなくなるだろう。
韓国の政治的空白が長期化しそうな状況で本格始動する第2次トランプ政権。日本の安全保障にも関連する「在韓米軍撤退」の行方は注視していく必要がある。
【深川孝行(ふかがわ・たかゆき)】
昭和37(1962)年9月生まれ、東京下町生まれ、下町育ち。法政大学文学部地理学科卒業後、防衛関連雑誌編集記者を経て、ビジネス雑誌記者(運輸・物流、電機・通信、テーマパーク、エネルギー業界を担当)。副編集長を経験した後、防衛関連雑誌編集長、経済雑誌編集長などを歴任した後、フリーに。現在複数のWebマガジンで国際情勢、安全保障、軍事、エネルギー、物流関連の記事を執筆するほか、ミリタリー誌「丸」(潮書房光人新社)でも連載。2000年に日本大学生産工学部で国際法の非常勤講師。著書に『20世紀の戦争』(朝日ソノラマ/共著)、『データベース戦争の研究Ⅰ/Ⅱ』『湾岸戦争』(以上潮書房光人新社/共著)、『自衛隊のことがマンガで3時間でわかる本』(明日香出版)などがある。