韓国版思いやり予算「10倍払わせる」と大見得を切るトランプ氏

「アメリカ・ファースト」(アメリカ第一主義)を掲げるトランプ氏にとって、現在NATO(北大西洋条約機構)など数多くの同盟国・友好国に駐留する米軍の“リストラ”は重要課題の1つと言える。

 事実、同盟国とはいえ、自国の防衛は自国で賄うのが筋で、米軍におんぶに抱っこで国防費を出し渋るのは、「フリーライダー(タダ乗り)だ」と発言するなど手厳しい。トランプ氏は在韓米軍をその典型と考えているらしく、ワシントン・ポスト紙によれば、第1次政権時の2018年に行われた非公開の資金集め集会で、「アメリカは韓国に対し巨額の貿易赤字を抱えながら、韓国を防衛している」と不条理を指摘したという。

 続けて「北朝鮮と韓国の間に3万2000人(当時)の米軍がいるが、今後どうなるか見ものだ」と「撤退」をチラつかせ、韓国版「思いやり予算(駐留負担金)」を、現行の約6倍、50億ドルに引き上げろと韓国側に迫った。

 結局、トランプ氏の試みは大統領選でバイデン氏に敗れたため雲散霧消するが、今回の米大統領選でも、終盤に入った今年10月、トランプ氏は遊説先で「在韓米軍撤退」論を持ち出し、「韓国は豊かな国でマネーマシン。大統領に再選したら、在韓米軍経費として年間100億ドル(約1兆5500億円。現行の10倍)を払わせる」と大見得を切っている。

トランプ次期大統領トランプ次期大統領(2024年12月26日、写真:ロイター=共同通信社)

 年明け1月20日に大統領の椅子に再び座ったトランプ氏が、リベンジとばかりに「在韓米軍撤退」に本腰を入れるのは自明だろう。「先進国となり金持ちの韓国を守ってあげているのに、1000億円規模の負担金では話にならない」との理屈で、韓国にディールを迫ることが十分予想される。

 もちろん10倍という値は非現実的で、駆け引き用の“ハッタリ”と見るべきだろう。トランプ氏としては、現行の2~3倍に持ち込めれば上等くらいの腹積もりではないだろうか。

 ちなみに日本の思いやり予算(同盟強靱化予算)は、2022~26年の5年間で約1兆550億円、年間約2110億円。在日米軍は約5万5600人なので、単純計算で1人当たり約380万円の負担だ。

 一方の韓国は、2024年11月に「防衛費分担特別協定」(SMA)を妥結。2026年の在韓米軍駐留費世の韓国側負担額、いわゆる「韓国版思いやり予算」は約1672億円で決着した。これを兵力約2万8500人で割ると1人当たり平均約587万円となり、韓国の方が負担額は多いとも言える。

在韓米軍司令官と握手を交わす韓国の尹錫悦大統領(2023年7月)在韓米軍司令官と握手を交わす韓国の尹錫悦大統領(2023年7月、写真:Yonhap News Agency/共同通信イメージズ)