
トランプ政権発足から1カ月が過ぎ、トランプ氏の発言に対する原油市場の反応が鈍くなってきた。そうした中、注目を集めているのがサウジアラビアの動向だ。ガザ問題やロシア・ウクライナ停戦協議で重要な役割を担うと見られているからだ。サウジの外交努力が地政学リスクと原油市場を大きく左右しそうだ。
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り、1バレル=70ドルから73ドルの間で推移している。水準は先週とほぼ同様だ。
原油市場はトランプ大統領の返り咲き以来、その言動に振り回されていた。米国の主要な原油調達先(カナダなど)に関税賦課をちらつかせたり、石油輸出国機構(OPEC)に増産要求を行ったりしたからだ。
だが、あまりに大量な「材料」に消化不良を起こした原油市場はトランプ氏の発言に反応しなくなっている感がある。
今週の原油市場で最も注目されたのはロシアを巡る動きだ。
ロシア南部グラスノダール地域にあるクロポトキンスカヤ送油管を運営するカスピ海パイプライン・コンソーシアム(CPC)は2月17日、ポンプ設備が無人機攻撃を受けたことを明らかにした。CPCは「攻撃は無人機7機によるものでテロ行為だ」と主張したものの、ウクライナからの攻撃かどうかは特定しなかった。
ロシアのプーチン大統領は19日「CPCの施設に対する無人機攻撃は西側同盟国の関与したウクライナによるものだ」との見解を示した。
CPCはカザフスタンにとって主要な原油輸出パイプラインであり、輸送量は世界の供給の約1%に相当する。今回の攻撃で日量約38万バレルの供給に支障が生じており、復旧するまで1カ月半から2カ月を要すると言われている。
ウクライナはここ数カ月間、ロシアの石油関連施設に無人機攻撃を仕掛けてきたが、米石油大手(シェブロンやエクソンモービル)が巻き込まれたのはこれが初めてだ。
バイデン前政権が課した制裁がロシアの原油輸出に影響を及ぼし始めている。