トランプ大統領(左)とプーチン大統領(右)は停戦交渉の開始で合意した=写真は2018年(写真:AP/アフロ)

トランプ米大統領がロシアのプーチン大統領と電話会談し、ロシア・ウクライナ戦争の停戦協議が開始されることへの期待感から原油価格は下落した。だが、交渉の行方は不透明なうえ、トランプ氏の「ガザ所有」構想など中東情勢は予断を許さない状況が続く。原油価格はこの先、どう動くか。

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り、1バレル=70ドルから73ドルの間で推移している。水準は先週とほぼ同様だ。需要に対する懸念は相変わらず根強いが、地政学リスクにも再び注目が集まっている。

 まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。

 石油輸出国機構(OPEC)は2月12日に公表した月報で「世界の今年の原油需要の見通しを前年に比べて145万バレル増加する」として前月の予測を据え置いた。

 OPECはさらに「(米大統領の新たな関税は)市場にさらなる不確実性をもたらした。不確実性の高まりは市場の需給関係を反映しない不均衡を生みだし、ボラティリティーを高める可能性がある」と警告を発した。

 OPECとロシアなどの大産油国で構成するOPECプラスは4月から生産量を回復する計画を実行に移すかどうかを今後数週間で決定するとしており、米国からこれ以上「雑音」が出てこないよう、釘を刺した形だ。

 国際エネルギー機関(IEA)は13日に公表した月報で「世界の今年の原油供給見通しは前年に比べて日量160万バレル増加する」として、増加幅を前月の予測から20万バレル引き下げた。ロシアの生産量を日量930万バレル、イランの生産量を日量330万バレルとそれぞれ10万バレルずつ引き下げたことによる。米国が今年に入って実施した両国への制裁の影響だとしている。

 米国の原油生産量は日量1350万バレルと過去最高に近い水準で推移しているが、「伸びしろ」はなくなってきているようだ。