トランプ大統領の「掘って掘って掘りまくれ」で原油価格は下がる、というわけでもない?(写真:FOTOGRIN/Shutterstock.com)

トランプ大統領の就任を受けて原油価格が下落している。背景にあるのが「掘って、掘って、掘りまくれ(drill, baby, drill)」という米国内向けのエネルギー振興策だ。原油生産が拡大するとの予測から価格の下押し圧力が強まっている。だがこの先、本当に原油価格は下がっていくのだろうか。話はそう、単純ではない。

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り、1バレル=75ドルから78ドルの間で推移している。15日に80ドルを超えて以降、原油価格は下落に転じており、水準は先週に比べて2ドルほど下落している。市場では米国の新旧大統領の政策が「売り」「買い」材料となっている。

 バイデン元大統領の「置き土産」が原油価格の下支えとなっている。

 1月10日に制裁逃れに使っている「影の船団」と呼ばれるタンカー183隻に制裁を科したことでロシアからの原油輸出が滞る可能性が高まっている。

 ブルームバーグによれば、ロシアの先週の海上原油輸出は約2カ月ぶりの大幅な減少となった。19日までの1週間に輸出されたロシア産原油は合計1926万バレル、その前の週は2106万バレルだった。

「ロシア産以外の原油の調達が増加する」との思惑から、超大型原油タンカーの運賃も直近1週間で2倍近くになっている。

 サウジアラビア国営石油企業サウジアラムコのナセルCEOは21日、「(米国によるロシア産原油タンカーへの制裁措置について)影響を受ける原油の量は200万バレル以上になるだろう」とした上で「市場で需給がどの程度逼迫するかは、まだ初期段階なので様子を見たい」と述べている。

 影響を最も受けるのは中国だが、原油代替の動きはそれほど活発ではないようだ。