
トランプ新大統領の動向に世界が注目するなか、欧州でますます勢いづいている人物がいる。ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」を率いるアリス・ヴァイデル共同党首だ。イーロン・マスク氏が最近突然「盟友」の名乗りをあげ、その「女トランプ」とも呼べる言動に支持者は熱狂。総選挙が1カ月後に迫るなか、AfDの支持率は20%に上る。移民の国外排斥などを訴える、その危ない正体とは。
(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)
就任早々、世界保健機構(WHO)脱退やパリ協定離脱を表明するなど、既存の世界秩序を破壊し始めたトランプ米大統領。しかし、迷惑千万な大統領令に嵐の如く署名して注目を集めたトランプ氏とは別に、たった1つ、しかも数秒の行動で世界の目を釘付けにした人物がいる。トランプ氏の「ファースト・バディ」を自称する富豪のイーロン・マスク氏である。
マスク氏は、大統領就任を祝うイベントでトランプ氏の支持者を前に感極まった様子で、右手を左胸に当てた後、斜め上にピンと伸ばすナチスの敬礼を思わせるジェスチャーを2度も披露した。わずか4秒ほどの出来事であるが、背筋が凍り付くような衝撃的な映像だ。

さすがに「ハイル・トランプ!」とまでは叫ばなかったものの、最初の敬礼の後には「ふむ!」と決意を示すような力強いうなり声が漏れ聞こえた。
この模様には批判の嵐が即座に巻き起こった。ニューヨーク大学でファシズムを研究する歴史家はSNSのブルースカイで、あのジェスチャーがまさしくナチスの敬礼であり「非常に好戦的」でもあったと指摘している。
トランプ氏は就任演説で米国政府は今後、男性と女性の性別しか認めないと宣言し、社会の多様性を否定する政策を推し進める構えだ。これはヒトラー支配下のナチスの優生思想にも通じかねないもので、マスク氏のジェスチャーはあたかも、“現代のヒトラー”に忠誠を尽くす象徴のようにも見える。
マスク氏がこの時、意図的にナチス式の敬礼をしたのかは定かではない。感極まって思わぬ行動に出てしまったという可能性もある。しかし、国際世論がすぐさま、このジェスチャーをしたマスク氏とナチスを結びつけたことには理由もある。マスク氏とドイツの極右政党を率いる「女トランプ」との蜜月ぶりだ。「ドイツのための選択肢(AfD)」を率いるアリス・ヴァイデル共同党首である。