欧州当局、Xのアルゴリズムを調査
また、ドイツのみならず英国での政治介入を試みるマスク氏に対し「断じて認めるべきではない」とする人たちの声がまだ多数派だ。英調査会社ユーガブが今月発表した調査によれば、マスク氏が英独で政治介入すべきではないとした人の割合が7割近くに上った。同じ調査でマスク氏が英独の政治に詳しいかという質問に6割以上の人たちが否定的な見解を示している。
とはいえ、欲しいものは金の力で奪い取るマスク氏のことである。すでにXを駆使して女トランプに有利な選挙戦を展開させようと試みるとみられ、当局から警戒されている。欧州委員会はドイツ総選挙を前に、XがアルゴリズムをAfDに有利に操作しているのではないかとの疑いで調査を始めた。
ドイツではマスク氏とヴァイデル氏の対談後、多数の研究機関に加え、国防省や外務省などXからの離脱が加速している。しかしマスク氏は、Xでのアピール力が衰えたとみれば、今度は欧州でも米大統領選終盤で行った「有権者に毎日100万ドルばらまき作戦」などやりかねない。
ドイツの首相就任式でマスク氏が「ハイル・ヴァイデル」とナチス式敬礼をする日など、永遠に来ないことを切望したい。
楠 佳那子(くすのき・かなこ)
フリー・テレビディレクター。東京出身、旧西ベルリン育ち。いまだに東西国境検問所「チェックポイント・チャーリー」での車両検査の記憶が残る。国際基督教大学在学中より米CNN東京支局でのインターンを経て、テレビ制作の現場に携わる。国際映像通信社・英WTN、米ABCニュース東京支局員、英国放送協会・BBC東京支局プロデューサーなどを経て、英シェフィールド大学・大学院新聞ジャーナリズム学科修了後の2006年からテレビ東京・ロンドン支局ディレクター兼レポーターとして、主に「ワールドビジネスサテライト」の企画を欧州地域などで担当。2013年からフリーに。