地政学的な要所となるグリーンランド(写真:AP/アフロ)
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(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 米国政府のグリーンランド領有をめぐり、国際情勢が緊迫の度を増している。

 トランプ米大統領は1月11日、「(グリーンランドについて)いずれにせよ米国が領有することになる」と再度述べた。「米国が行動しなければロシアと中国によって支配される」というのがその理由だ。

 デンマークの自治領であるグリーンランドは人口密度は極めて低いが、北極海と北大西洋の間に位置するため、ミサイル攻撃の早期警戒システムや船舶監視の拠点に適している。そのため、ロシアや中国も関心を示す地政学的な要衝だ。

「ロシアと中国に支配される」は根拠が薄い

 だが、フィナンシャル・タイムズが8日、「(北欧の高位外交官の言葉を引用し)ここ数年、グリーンランド近海でロシアや中国の船舶や潜水艦などが積極的に活動しているとの証拠はない」と報じたように、トランプ氏の主張の根拠は薄弱だ。中ロ両国はグリーンランドに対する領有権も主張していない。

 一方、米国はグリーンランドで地歩を固めている。

 米国は第2次世界大戦以来、グリーンランド北西端のピツフィク基地に100人以上の兵員を恒久的に駐留させている。デンマークとの協定上は、米国は自らの判断でどのような規模の部隊でもグリーンランドに派遣できる広範な権限も有している。

 だが、トランプ氏は9日、「リース契約では不十分だ。必要なのは所有権だ」と述べた。

 グリーンランドの米国の権益が脅かされていないのにもかかわらず、なぜ、トランプ氏はグリーンランドの領有にこだわっているのだろうか。

 トランプ氏のグリーンランド取得構想は政権1期目の2018年に始まる。