制裁強化でイラン産原油の輸出が大幅縮小?

 トランプ氏は就任時に「ベネズエラからの原油購入を停止する可能性が高い」と述べた。

 ベネズエラの石油産業は2019年以降、米国の制裁下にあるが、バイデン政権下で2022年から例外措置が講じられており、昨年の対米原油輸出は前年比64%増の日量約22万バレルだった。

 トランプ氏は中東政策について具体的なことを語っていないが、対イラン強硬政策の復活が確実視されている。トランプ氏は1期目に前政権がまとめた「イラン核合意」から脱退し、制裁を大幅に強化した経緯がある。

 イランの昨年末の原油生産量は日量約340万バレルだ。

 制裁が再び強化され、イラン産原油の輸出が大幅に縮小すれば、世界の原油市場は過剰から不足に転じることになるだろう。

 さらに、米国がイスラエルとともにイランの核関連施設を攻撃すれば、中東地域の地政学リスクは一気に高まってしまう。

 需要面からの原油価格の押し上げ効果もある。

イランの反米・反イスラエルの軍事パレード=2025年1月10日(写真:AP/アフロ)

 トランプ氏は就任演説で「バイデン政権下で1980年代以来の低水準に落ち込んだ戦略国家備蓄(SPR)を上限まで補充する」と述べた。

 SPRの上限は約7億バレルだが、現在の備蓄量は約3億9000万バレルだ。SPRの補充により米国の原油市場の需給が引き締まる可能性は排除できない。

 トランプ氏は国内の増産でこれらの問題をオフセットするつもりだろうが、前述したとおり、当てが外れる可能性が高い。トランプ氏の意図に反して原油価格が上昇するリスクが十分にあるのだ。

 逆に、望ましくない形で原油価格が下落するシナリオもある。