就任式の祝賀舞踏会に参加したトランプ夫妻(写真:ロイター/アフロ)就任式の祝賀舞踏会に参加したトランプ夫妻(写真:ロイター/アフロ)

 トランプ氏が米大統領に就任した。中国に対する即時関税の発動は見送られたが、果たしてトランプ第二次政権はどうなるのか。みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏が就任演説を読み解いた。(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)

演説が「移民→エネルギー→関税」の順だった意味

 米国時間20日正午(日本時間21日午前2時)、米国の第47代大統領に共和党のドナルド・トランプ氏が就任した。金融市場はその内容に構えていたものの、やや抽象的な印象が先行したこともあり、資産価格は大きく荒れていない。

 就任初日から稼働が予想されていた追加関税に関しても、式の直前にその可能性を否定する観測報道が相次ぎ、実際、踏み込んだ内容はなかった。

 関税政策については「関税を含む海外からの歳入を担うERS(External Revenue Service:対外歳入庁)を新設する」との方針に言及はあったが、派手なヘッドラインに慣らされている金融市場は材料視していない。

 もっとも、今後、ラトニック新商務長官の下で追加関税の脅しが繰り返され、対米投資を求めるような情報発信が相次ぐ可能性は高く、引き続き関税は予断を許さないテーマだ。

 ちなみに就任式後、トランプ大統領は「2月1日までにメキシコとカナダへ25%関税を賦課する」と発表している。

 就任演説において、関税政策は3つ目の論点として登場していた。それでは、最初に言及された論点は何だったかと言えば、移民政策だった。「南部国境に国家非常事態を宣言する」と移民増加が治安悪化に直結している現状を踏まえ、強力な措置を取ると謳った。

 もっとも、この点についても、金融市場の関心はあくまで「移民が米労働市場の需給を緩和している」という事実にトランプ政権がどのように向き合うのかにあったはずである。演説ではこの点に関する言及は一切なかった。

 移民政策の次に言及されたのはエネルギー政策であり、ここでも国家エネルギー非常事態を宣言するとして優先度の高さがアピールされている。