「掘って掘って掘りまくれ、ベイビー」
言及された最初の2つの政策については非常事態が宣言されており、政権内における注目度の高さはここから察することができる。
トランプ大統領は「地球上のどの国よりも石油とガスを手に入れることになる。そしてそれを使う。我々は価格を引き下げ、戦略埋蔵量を再び最大まで埋め尽くし、米国のエネルギーを世界中に輸出する」と主張し、「足元にある液体の金(liquid gold under our feet)」を使って豊かになると宣言している。
その上で「掘って掘って掘りまくれ、ベイビー(We will drill, baby, drill)」と強調し、化石燃料との決別が謳われてきた近年の潮流から真っ向対立する方針を明示している。こうしたエネルギー政策は第二次トランプ政権において唯一、ディスインフレ色を帯びた論点でもあり、その注目度は非常に高い。
演説中、政策の優先順位を明示したわけではないが、仮に優劣があるとすれば、おそらく重要なものから言及するだろう。この点、移民とエネルギーには緊急事態宣言が付され、関税については抽象的な情報発信にとどまったというのが演説の客観的評価となる。
ただ、前政権時代からの情報発信も踏まえれば、「関税についてはもはや多くを語る必要すらない」ということなのかもしれない。
演説の最後に言及されたのは安全保障だった。ここでは「(前政権の)2017年と同様、世界がこれまでに見たことのない最強の軍隊を再び構築する」と述べられたが、事前報道にもあった通り、当初「就任後24時間以内の停戦」と設定されたロシア・ウクライナ戦争の今後については特に言及はなかった。
現在、その目標は「就任後100日以内」に後退しているが、ロシア軍が戦況を優位に進める中、まだ交渉糸口すら見いだせていないとの見方は多い。こうした状況はエネルギー価格の不安定化を招くため、上記エネルギー政策の含意とは正反対に作用する論点である。