気がかりなエネルギー価格の高止まり
為替見通しの観点からは、「トランプ政権下でエネルギー価格が安定する」という前提がどこまで有効なのかを注目したい。
就任式直後は「具体的な追加関税発動は見送り」とのヘッドラインからドル売り・円買いが優勢となったが、間もなくしてカナダやメキシコに対する追加関税方針が報じられるとドル買いが盛り返している。今後も、こうした時間帯が多くなってくるだろう。
それよりも長い目線で注目されるのはエネルギー価格の推移だ。既報の通り、退任直前の1月10日にバイデン前大統領がロシアの石油産業に対する経済制裁を強化したことで、原油価格は12月以降急騰し、現在は80ドル近傍で高止まりしている(図表①)。
【図表①】
2025年の原油価格が70ドル程度で推移すれば、兆円単位で日本の貿易収支を改善させる。それが円安圧力を緩和する一因になると考えてきた。今のところ、それを確信できるだけの状況になっていないことは気がかりである。
1月15日にはイスラエルとハマスがパレスチナ自治区ガザでの戦闘停止で合意した。本来であれば産油国イランが戦闘に巻き込まれる懸念が後退し、原油供給に対する制約が和らぐとの展開が想定されたが、現実はそうなっていない。
80ドル近傍での高止まりが続くとすれば、為替見通しの前提は変わってくる。