若手の育成に励んだ阪神2軍監督時代の掛布氏=2016年2月(写真:共同通信社)

ホームラン王に3度輝いた“ミスター・タイガース”こと掛布雅之氏が、その打撃の真髄をはじめて公開した『掛布の打撃論』(日本実業出版社)。自身のバッティングテクニックを詳細に語る1冊から、ポイントを4回にわたって紹介する。第4回は、プレースタイルに応じた適切なトレーニングと体重管理の重要性について。

※本稿は『掛布の打撃論』(掛布雅之著、日本実業出版社)より一部抜粋・再編集したものです。

ウエイトトレーニングの重要性

 中学、高校生ぐらいから、体力に応じて器具を使ったウエイトトレーニングの癖をつけたほうがいいでしょう。大きな負荷をかける必要はありませんが、習慣はつけておくべきだと思います。私たちが腕立て伏せを毎日やっているのと一緒で、それをもっと科学的、効率的にやるわけですから。若いうちから体幹を鍛えておくと、打つ、投げるの技術の習得スピードが大きく変わってきます。

 ウエイトトレーニングは絶対に必要ですが、特にプロの場合は自分のプレースタイルに見合った体づくりをすることが大切です。筋肉の重たさが邪魔することがあるので、単純に筋肉量を増やせばいいというわけではないのです。

 私の現役時代の例で言うと、身長176センチで、ベスト体重は78キロでした。80キロを超えると、打球の飛距離は伸びるのですが、下半身に負担がかかりすぎてケガの原因になります。

 長いシーズンを乗り切るには、体重は重すぎても軽すぎてもダメです。私の場合、春季キャンプに83キロぐらいで臨むと、オープン戦が始まって2週間ほどで5キロ減のベスト体重になっていました。

 夏場はいかに体重を維持するかも勝負です。空腹感がなくても、意識して食べないといけません。ゴルフ中継で渋野日向子選手らがラウンド中におやつを食べるシーンが流されることがありますが、あれも体重管理の一環でしょう。ゴルフも野球も、1年を乗りきるためには体重キープが重要な課題となるのです。

 私は、当時としてはウエイトトレーニングにも力を入れたほうだと思います。試合前にはトレーニング器具を使っての強化に励みました。誰かに言われたわけでなく、自分で必要と考えてのことでした。