最新の解析によるデータ化の落とし穴

 今の時代は投手なら初速、終速だけでなく、球の回転数や回転軸まで1球ずつ事細かなデータがわかります。打者もそうで、スイングスピードや打球角度などが数値化されるのです。ですから、オフになると選手はそのデータをもとに改善点をあぶり出し、フォーム変更などにトライするのです。

 でも、私はそこには落とし穴もあると思っています。動作解析やデータ上の数字に左右されて変化するということは、つまり平均点を目指すということにもなりかねないのです。我々の時代も1年ごとに体も変われば、フォームも微調整していきました。自分なりに弱点克服をどうすればいいかを考えて変化したのです。

 ときには間違った方向に進むこともあるでしょうが、とんでもない大化けをする可能性もあります。いい意味の荒々しさや、個性につながるのです。動作解析ありきでは、強烈な個性となる王さんの一本足打法や野茂英雄氏のトルネード投法は生まれなかったかもしれません。

「食事」に苦しめられた新人時代の大山選手

 今は栄養学が発達しており、トレーナーが効果的な食事方法をしっかり指導してくれます。我々の時代とは雲泥の差です。

 例えば、太るため、やせるため、食事メニューの食べる順番を変えるだけでも効果が違うとわかっているのです。「野菜から食べなさい」とか、「炭水化物から食べなさい」とか選手個々の事情によって指導が変わります。選手寮に栄養士が来て、料理をすべて確認します。その上で、「朝はお米を何グラム以上食べなさい」などの細かな指示が下るのです。

 今は食事だけでなく、必要な栄養を効果的に補うためのサプリメントがたくさんあります。プロテインもそのひとつで、いろいろな種類があり、トレーナー室には山積み状態です。

 体重計に乗っただけで、体のデータが丸裸になるのですから、すごい時代です。水分量、筋肉量、太ももの太さ、ふくらはぎの太さ、一瞬ですべてわかるのです。こうなると選手も食事管理は専門家に任せておいたほうが楽で、間違った方向にはいかないはずです。

 私が阪神2軍監督時代に見た中では、2016年のドラフト1位・大山悠輔内野手の「食事」が強烈に印象に残っています。