ある熱狂的な川崎フロンターレの障がい者サポーターがみたJリーグのアクセシビリティの現状とは(写真:アフロスポーツ)

サッカーJリーグが誕生から30周年を迎えた。この間、世の中は大きく変わった。企業の社会的責任が注目され、「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包摂)」が重要なキーワードになった。

Jリーグもこの潮流に乗ってきた。6つある活動方針の1つに障がいのある人も一緒に楽しめるスポーツのシステムをつくる、としてインクルージョンを念頭においている。スタジアムにおけるアクセシビリティ(使いやすさ)は、どこまで進化できるのか。連載第3回はある車いすサポーターのスタジアム観戦記から、Jリーグのアクセシビリティの現状と課題を探る。

(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)

第1回:Jリーグ30周年、英プレミアリーグで見た障がい者が熱狂できるスタジアム
第2回:英プレミアリーグのレスター、障がい者サポーター1000人全力支援で競合を圧倒

 今年2月、ある車いすユーザーによるJ1鹿島アントラーズの試合観戦記がnoteに掲載された。

「さて、いよいよ魅惑の車椅子ゾーンへ」

「ババーン!コンクリートの柵にくっつく感じでLEDの掲示板がくっついています。そのすぐ後ろが車椅子席。ピッチサイドなんですよー!しかも車椅子ユーザーがちょうど見やすい高さ」

「コレはご褒美。間違いない。あらゆる苦難を乗り越えて、車椅子ゾーンまでたどり着ければ、そこには楽園が待っている!」(いとうちひろさんnoteより抜粋)

 執筆したのは車いすの川崎フロンターレ・サポーター、いとうちひろさんだ。いとうさんは、電動車いすで行ける範囲のアウェー遠征を続けて6年になる。

 車を持たないため、主な交通手段は公共交通機関だ。飛行機での移動は車いすの解体を余儀なくされ手間もかかるため、地方はもっぱら鉄道で行ける地域を選び、観戦を楽しんでいる。冒頭に紹介したnoteで、自身が培ってきた車いすでのアウェー遠征でのノウハウや、各スタジアムの良さ、そして改善してほしい点などをまとめ、広くシェアしている。

 筆者がこのnoteに着目したのは、移動にかかる準備などさまざまなハードルを乗り越えたどり着いたスタジアムでの、あふれるような観戦の楽しさが伝わってくるからだ。これまで詳報してきたプレミアリーグのクラブが用意している障がい者向けの細かな交通アクセスガイドも秀逸だが、ユーザー視点の一人称で書かれ、語りかけるようないとうさんのnoteは、同様のユーザーに親しみやすいのではないかとも感じた。

 川崎サポーター歴27年のいとうさんは、体の不調を感じてすぐ歩行が困難になり、のちに膠原病と診断された。車いす生活になって10年が経つ。当初は、体の痛みや病気により仕事を変えざるを得なくなるなど「サッカーどころではない」時期が続いた。病院までの50メートルの距離を「泣きながら1時間かけて歩かなければならない時もあった」と振り返る。