
米トランプ大統領とウクライナ・ゼレンスキー大統領の会談決裂をめぐり、米ウの関係を取り持とうとする英国のしたたかさが際立っている。スターマー英首相はトランプ大統領と会談した際、英チャールズ国王からの国賓としての招待状を手渡しており、チャールズ国王にはトランプ氏とゼレンスキー氏を和解させる「ピースメーカー」としての役割に期待の声が挙がる。3日には会談での衝突の結果か、米国がウクライナへの軍事支援を一時停止と発表。米ウの関係修復は急務だが、チャールズ国王自身も仲介者としての役割を担いたいようだ。
(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)
米トランプ大統領およびバンス副大統領による、ウクライナ・ゼレンスキー大統領に対するホワイトハウスでの「恫喝外交」から一夜明けた3月1日、英国では新聞各紙が一面トップでその異様な有様を報じた。
強烈な見出しのいくつかは以下の通りである。
「世界を恐怖に陥れたスペクタクル・大統領執務室での罵り合い」(デイリー・メール紙)
「大統領執務室での憤怒」(タイムズ紙)
「ゼレンスキー氏のホワイトハウス会談は激火で決裂」(フィナンシャル・タイムズ紙)
大衆紙ザ・サンに至っては、ホワイトハウスをもじって「ザ・ファイトハウス」と揶揄。「奇襲を受けたウクライナの英雄」とも記している。
言い得て妙であるが、この会見が良識ある政治家同士による外交の場とは到底思えない、まさに前代未聞の「乱闘状態」であったという認識には、クセの強い英メディアの間でも全会一致であったようだ。
「ちゃんと(米国と大統領に)感謝しろ(バンス氏)」「お前は米国に対して無礼だ(トランプ氏)」と、カメラの前で公然とゼレンスキー氏をこき下ろした米政権トップ2人のみっともなさに、開いた口が塞がらなかった人たちは少なくあるまい。
ロシアの侵攻から3年が経ち、同胞の殺戮を日々目の当たりにさせられているウクライナ市民はもとより、5年以内に戦火が広がりかねないと警鐘が鳴らされ続けている欧州各国でも、この会談結果は衝撃を持って受け止められた。これで停戦への希望が絶たれてしまったのか、ロシアによる欧州での勢力拡大は不可避なのか――。
こうした中、事態収拾に「ピースメーカー」として期待をかけられている人物がいる。英国王・チャールズ3世である。