ロシアによるウクライナ侵攻から3年が経過した(写真:AP/アフロ)
ロシアによるウクライナ侵攻はここ数年の円安局面が始まる号砲だった。この3年で日本経済の姿はどのように変わったのだろうか。(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)
「平和の配当」もないのに株価は上昇
2月28日、トランプ米大統領とゼレンスキー・ウクライナ大統領はホワイトハウスで会談した。ウクライナにある石油・ガスを含む資源の共同開発などを盛り込んだ協定に署名するためにゼレンスキー大統領が訪米したものであったが、会談冒頭で激しい口論に至り、協定署名が見送られるという結末に陥った。
ゼレンスキー大統領は協定内で安全保障支援の確約が明記されることを求めたものの、米国がこれを譲らなかったという構図である。本件に関しては米国、ウクライナ双方の側に立つ主張があり得るものの、筆者は門外漢ゆえ、踏み込んだ認識の提示は控えたい。
金融市場の視点から言えることは、地政学リスクが残存したという事実を指摘することになる。
この一報を受けて同日の米株式市場は値を下げる場面も見られたが、結局、安全資産である米国債への需要が高まる中、米国債10年物の利回りが一時2カ月半ぶりの低水準となる4.1%台まで低下し、これが株価を支えるに至っている。
和平の進展による「平和の配当」は世界経済の押し上げに寄与する。これが短期的に叶わない状況にもかかわらず、株式市場は悲観していない。
日本にとって、ロシア・ウクライナ戦争の開戦は今回の円安局面の号砲でもあった。