
(牧野 知弘:オラガ総研代表、不動産事業プロデューサー)
アベノミクスとともに急増した富裕層
街中や駅では平日でも大勢の外国人観光客の姿を見ることはもはや日常になったが、よく観察してみると、外国人ばかりではなくごく普通の日本人観光客が多く混ざっていることに気づく。
以前であれば、勤め人の多くは月曜日から金曜日まで会社のデスクに座って仕事に追われる生活が続くので、平日、ましてや子供を連れて観光旅行するなどということはめったにないことだった。
ところがキャリーバッグを引きずっているのはリタイアした高齢者ばかりではなく、若いカップル、学校はどうしたんだろ?と思われる小学生の手を引いた夫婦といった、ごく普通の人たちもいる。
先日、野村総合研究所が発表した「2023年の日本における純金融資産保有額別の世帯数と資産規模の推計値」にそのヒントが隠されている。
この調査は2年に一度行われるもので、世帯が保有する純金融資産(資産額から負債額を控除した額)を5つのカテゴリーに分けて、世帯数と保有額を分析したものである。
カテゴリーの分け方は純金融資産額が5億円以上を「超富裕層」、1億円以上5億円未満を「富裕層」、5000万円以上1億円未満を「準富裕層」、3000万円以上5000万円未満を「アッパーマス層」、3000万円未満を「マス層」としている。

仮に「お金持ち」の定義を、「億万長者」の呼称に倣って純金融資産で1億円以上とすると、国内のお金持ちは165万3000世帯、保有資産額は469兆円となる。全世帯数の3.0%で金融資産全体額の26.1%を保有していることになる。
さてこれを18年前の2005年との比較で指数化してみよう。2005年の世帯数および金融資産額をそれぞれ100として、18年間の推移をみたのが次のグラフである。驚くべきことに超富裕層と富裕層の伸びが著しいことがわかる。


18年間を世帯数でみると、超富裕層は2.27倍、富裕層は1.89倍もの高い伸び。全体世帯数の伸びは1.14倍であるから、いかに急伸したかがわかる。いっぽうでアッパーマス層およびマス層という一般層は全体世帯数の伸びを下回る状況にある。
資産額でみても同様の傾向で、超富裕層に至ってはなんと2.93倍、富裕層も2.0倍の増加。全体額は1.56倍なので、多くの金融資産が「お金持ち」に集積しているさまが窺える。ここでもアッパーマス層およびマス層は全体の伸びを下回る状況にある。
時系列でみれば、2013年以降、「お金持ち」が急増していることが鮮明だ。この現象はまさにアベノミクスと言われた大規模金融緩和が始まりだったと言ってよいだろう。