
(平山 賢一:東京海上アセットマネジメント チーフストラテジスト)
「ほったらかし投資」が理想だが…
2024年8月初旬、日経平均株価は、わずか3営業日で2割も急落した(図参照)。筆者を含め帰宅途中のビジネスパーソンの視線が、スマートフォンの画面に釘付けになっていたのが思い出される。始めたばかりのNISA口座の評価額をチェックした人が多かったのだろう。中には、顔を青くしている人もいた。
過去の事例を見ても、数えるほどしかない急落で、投資ビギナーだけでなく専門家も情報収集に慌てたというのが現実だ。ちょうど日本銀行が利上げを決めた直後だっただけに、報道される内容も偏りがあり、情報が極端に先鋭化した可能性が指摘されている。

その情報に関して、10年前と様変わりになってきているのが、メディアによる報道の量と質であろう。現在は、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などの新興メディアの発達により、新聞やテレビといった既存メディアに加えて、伝達される情報量が格段に増加してきている。SNSなどをメディアとして位置づけるべきかどうか議論はあるが、その影響力は大きくなっているだけに無視できない存在である。
果たして金融市場の混乱時に、何を信じて行動したらよいのか? 情報が氾濫する社会で、長期投資を続けるために何が必要なのか? 以下では、投資ビギナーが知っておくべき報道との接し方について考えてみたい。
新たにNISA口座を開設して、資産運用の世界に足を踏み入れた投資ビギナーにとって、最も厄介なのは金融市場の混乱にどのように対応したらよいのかという点だろう。
理想を言えば、一度決めた方針に則り、淡々と長期投資を続けたいところ。投資期間が長期であるほど、短期的な市場変動を気にすることなく積み立てなどを続けていく「ほったらかし投資」が望ましいとされるからだ。
しかし、株価や為替レートの大変動が発生すると、気になって仕方なくなるのが人間の性(さが)。各種のメディアにより報道されるニュースの数々は、投資ビギナーだけでなく多くの人々の心を揺さぶる。投資対象の評価額が増えていくのならばよいのだが、日に日に減少していくと、居ても立っても居られなくなる。