
石破茂首相が地方創生を再加速させようとしている。地方の発展が叫ばれる一方、人口減少という社会課題を抱える中、現実的には都市機能のコンパクト化も求められている。居住エリアの適正化はいかにして図られるべきか。不動産業界のプロが、コンパクト化進展の必要性を解説する。
※本稿は『新・空き家問題』(牧野知弘著、祥伝社新書)より一部抜粋・再編集したものです。
(牧野 知弘:オラガ総研代表、不動産事業プロデューサー)
「ポツンと一軒家」はおもしろいが…
毎週日曜日の夜、テレビ朝日系列で放送される「ポツンと一軒家」という番組があります。タレントの所ジョージさんと、林修先生が日本中に点在する、周りには誰も住んでいないような一軒家に住む住民を紹介し、その生活ぶりをレポートするものです。
2018年10月からレギュラー番組になって以来、6年以上になりますので人気のある長寿番組と言えます。
テレビスタッフが車1台やっと通れるような狭い道を登っていく先に突然現れる一軒家。生活上の不便さはあるものの、自然環境に恵まれ、ほぼ自給自足に近い生活を送る姿は、特に都会に住む人たちから見れば、驚きと同時にその自由な生活ぶりにある種の羨望がある。そんなギャップも演出の肝になっています。
しかし、すこし見方を変えると、かなり山奥にあるポツンと一軒家にも、多くのケースで電気が引かれていることに気づきます。またアプローチする道はいちおう舗装され、小川には橋が架けられています。私道ではなく公共道路である限り何らかのメンテナンスが施されているはずです。
私の知人である霞が関の役人の1人は、「『ポツンと一軒家』は番組としてはおもしろいのだけど、ああいう生活をしている人を美化しないでほしい。だって彼らのために生活インフラを整えるコストは半端ない。できれば、山から下りてきて街に住んでほしい。正直、中山間地域のインフラをいつまで維持できるか本当に心許ない」と言います。

国土の均衡的な発展を是とする霞が関の役人でも、もはや「ポツンと一軒家」をおもしろいというだけの感想で観ることができなくなっているのが日本国の現状です。