
(牧野 知弘:オラガ総研代表、不動産事業プロデューサー)
増えているのは観光客だけではない
街中を闊歩する外国人の姿が、コロナ禍からの回復につれて目立つようになった。主要な駅、空港やそこに向かう鉄道車両内が大きなキャリーバッグとたくさんのお土産を手にした外国人観光客で混雑する光景は今や日常と言ってもよい状態だ。
日本政府観光局の調査によれば、2024年(令和6年)の訪日外国人の数は3687万人と、対前年比で47.1%の増加。過去最高だったコロナ前の2019年3188万人を15.6%も上回る活況ぶりである。
こうした状況に一部の観光地では外国人観光客のマナーの悪さや、地元住民の住環境、移動手段を脅かすなどオーバーツーリズムを指摘する声も後を絶たない。
ただ街中や電車内で目立つ外国人をよく観察すると、実はそのすべてが観光客ではないことに気づく。どうみても日本で普通に生活している外国人たちも大勢いるのである。
今までの我々日本人からみるステレオタイプな在留外国人は、戦前から日本で暮らしてきた韓国や北朝鮮の人たち(特別永住者)、横浜や神戸などの中華街で働く華僑と呼ばれる中国人たちだった。
ところが最近では丸の内や大手町の金融街を歩くインド人、IT・情報通信会社がひしめく渋谷の超高層ビルに出入りする中国や台湾、韓国系の人たちなどの数が目立って増えているのだ。
総務省が発表した「住民基本台帳に基づく、人口、人口動態及び世帯数のポイント(令和6年1月1日)」によれば、日本の人口は1億2488万5千人。前年比で53万1千人の減少。日本の人口は2010年をピークに15年連続減少したことになる。
そしてこのデータを注意深くみると、日本人だけに限ってみると86万人も減少している。補っているのが在留外国人である。在留外国人人口は332万3千人と前年比で32万9千人、11.01%も増加している。
在留外国人数は1990年代後半から増加ピッチを高め、2021年、22年のコロナ禍による減少を経て23年以降は急激にその数を伸ばしている。いわば日本の人口減少を在留外国人の増加で緩和しているというのが実態なのだ。
現在、日本国政府は異次元の子育て政策を掲げ、人口減少に何とか歯止めをかけようと躍起であるが、厚生労働省の推測では2024年の出生数は69万人程度とついに70万人を割り込むとされ、高齢化を背景とした死亡者数の増加で人口の自然減状態がさらに悪化していくことが明らかである。
いっぽう在留外国人は転入者が60万6千人、転出者28万8千人で31万8千人の増加、これに彼らが日本国内で出生することによる自然増1万1千人を加えた32万9千人の増加である。顔立ちは外国人でも日本語を流ちょうに操る外国人が目立って増えているのはこうした日本生まれの外国人たちだ。