2026年は超高額マンションの価格も落ち着いてくるか?(写真:西村尚己/アフロ)
目次

(牧野 知弘:オラガ総研代表、不動産事業プロデューサー)

 2025年の不動産マーケットは、地価および建設費の上昇を背景に都心を中心とした新築マンションの高騰が止まらず、この影響が中古マンションマーケットにも波及。さらに外資系資本による日本企業所有不動産の買収や外国人によるマンション爆買いなどが話題となる年だった。

 さて2026年はどんな年になるのか。年初にあたって、不動産マーケットの行方を3つのポイントから考えてみよう。

①インフレの進行

 長きにわたるデフレに苦しめられてきた日本だが、コロナ禍以降の激しい円安は物価高騰を招き、今や先進7か国で最もインフレ率の高い国となっている。生活物価の上昇は食料品を中心として値上がりを続け、一部の大企業を除いて賃金の上昇が物価上昇に追いつかず、実質賃金が目減りする状況が続いている。

 政府はまだデフレに逆戻りするリスクがあると警戒を緩めていないが、進行するインフレに備えて、現金資産を持たずに株式や債券に振り向ける、金や不動産などの実物資産の保有を増やす動きが強まっている。

 さらに高市政権はアベノミクスの継承を唱え、総額18.3兆円もの補正予算を決議。マーケットへのマネーの大量供給による日本経済活性化を高らかに宣言している。この額はコロナ関連対策予算の10.5兆円をはるかに上回る規模になる。

 日本の不動産価格の高騰に拍車がかかったのが、実はこのコロナ関連予算だった。コロナ対策として緊急に供給されたマネーだったがその一部が株式や不動産投資に向かったことはよく知られた話だ。

 今回の補正予算は国民に広くばらまかれるものではなく、成長が期待される分野に集中的に供給されるものではあるが、不動産マーケットにも一定の恩恵があることが予測される。

 ただ、新築マンション価格は建設費の高騰でインフレを先取りしており、東京カンテイの調べでは、東京都民の平均年収(592万円)で都内新築マンション(ファミリータイプ70m2台、1億526万円)を購入するには年収の17.78倍も必要であるとされる。

 またパワーカップルと呼ばれる夫婦共働きで世帯年収が1500万円から2000万円程度の世帯でさえも、湾岸エリアの中古タワマンが1億円後半から2億円台になるとさすがに手が出ない水準になっている。

 必定、新築マンションの買い手は更なるインフレ進行を確信する投資家や富裕層の動向次第ということになりそうだ。