金利の先行きはどの方向か(写真:sommart sombutwanitkul/Shutterstock.com)
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(平山 賢一:麗澤大学経済学部教授/東京海上アセットマネジメント チーフストラテジスト)

 わが国の長期国債利回り(10年)は、直近で1.9%を超える水準にまで上昇している。超長期国債利回り(30年)についても12月4日に3.4%を超え、マイナス金利時代とは隔世の感がある。債券市場の参加者には、金利の変動を抑制するという非伝統的金融政策の呪縛から解き放たれた安堵はあるものの、その上昇ペースに不安を覚え始める人もいる。

 一般に、株式市場や為替レートへの関心は高いものの、地味な領域であった国債利回りへの関心が高まるのは珍しい。マイナーなテーマにもかかわらず、多くの人々の注目が集まっているのは、わが国の経済が、大きな転換点を迎えていることを示唆しているのだろう。

 果たして今後、長期金利はどのような推移をたどるのだろうか?

 住宅ローンの固定金利だけでなく、企業の設備投資計画や株式の魅力度にも影響を与えるだけに、この疑問は、多くの人々の関心でもあるはずである。以下では、この疑問に答えるためのシナリオの前提になる金融史における「金利のパターン」を整理してみたい。

国債利回りで繰り返された「金利のパターン」とは

 まずは、最近の国債利回り(10年)の推移を確認してみよう。

 足元の日本国債の利回りは上昇に転じたとはいえ、まだ2%には届いておらず、スイスも2%を下回っている。2024年12月には、中国の国債利回りも2%を下回った。

 現状を理解するためには、数百年にわたる金利のパターンを振り返るとよいだろう。このコラムでもしばしば触れているが、国債利回りは、2%水準を割れると上昇に転じ、短期で解消されるという「金利のパターン」が繰り返されてきた。そのため、このパターンに則れば、最低金利国の国債利回りも2%を上回る水準にまで回帰するはずである。

 そのきっかけになるのは、財政状況の悪化だけでなく、17世紀後半のオランダの事例にあるように、政府による国債管理に対し金融市場からの信認(クレディビリティ)が保てなくなることである。