財政拡張を唱える野党の存在が材料視されている。写真は石破首相(写真:つのだよしお/アフロ)
(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)
日本版トラスショックはあるのか?
7月は日本政局の変化を先回りするように、円売りや債券売り(円金利上昇)が盛り上がった。具体的にはインフレ下での拡張財政を訴える野党勢力の動きが材料視されており、少数与党となった自公連立政権もその影響を免れないのではないかとの思惑が背景にある。
このような光景が、2022年9~10月に英国で発生したトラスショックを彷彿させるという論考が散見されるようになっている。
実際、円金利に関しては、4月以降、20年、30年、40年といった超長期金利の騰勢が注目され続けており、7月に入ってからは10年金利も1.60%に肉薄する場面が見られた。この円金利上昇と円安が併存しているため「これは債務危機の予兆ではないのか」との思惑が強まるのも理解できる。
筆者の結論を先に言えば、トラスショックほどの急性的な動きは考えにくいとしても、過去に言われてきた「日本国債は内国債だから大丈夫」「膨大な対外純資産、経常黒字があるから大丈夫」といった議論を現在に当てはめることには慎重であるべきと考えている。今回と次回の2回を通じて日本版トラスショックへの考え方を整理したい。
簡単にトラスショックのおさらいをしておこう。