
(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)
「裏の主役」だった欧州
2025年も上半期を終えた。予想通り、第二次トランプ政権の一挙手一投足に振り回される期間だったが、「どうせ関税政策はブラフ(はったり)」という大方の予想に照らせば、想定外の事態に陥っているとの評価で差し支えないだろう。
米国が予想以上に孤立主義へ旋回したことで、金融市場では「ドル離れ」が一大テーマとなり、もとより存在した第二次プラザ合意やマールアラーゴ合意といったレジームチェンジへの期待がにわかに高まった。
この点、筆者は米国債離れの背中を押し、基軸通貨性の毀損にもつながりかねないドル安誘導はトランプ政権の望むところではなく、「米国主導のドル安相場」という思惑はあくまでメディアのナラティブと考えてきた。現時点で入手可能な続報を踏まえる限り、この考え方はおおむね正しかったと考えている。
なお、トランプ政権が相場の主役となることは事前に予想されていた展開だが、その余波で、意外にも上半期に注目度を高めたのが欧州だった。
トランプ政権の孤立主義が安全保障面における欧州の戦略的自律を促したという事実が歴史的には特筆されそうだが、為替市場でも欧州の相対的な高評価が際立った期間であった。
その意味で「表の主役」は予想通りトランプ政権だったが、「裏の主役」は欧州だったというのが2025年上半期の注目点と言えそうである。
例えば、G10通貨の動きを具体的に見てみよう(次ページ図表①)。